大阪でオフィス需要好調 新ビル相次ぎ供給増も、空室率上がらず 人材獲得競争が影響
大阪市中心部のオフィス需要が好調を維持している。2024年には過去最大規模とされるオフィス供給量があり、空室率の上昇も懸念されたが、民間調査によればほぼ横ばいの状態が続いている。今年はキタと呼ばれるJR大阪駅周辺で多くのオフィスビルが竣工(しゅんこう)し、企業が新たな人材獲得戦略として、立地や設備に優れた新オフィスを選び入居している側面がある。 オフィス仲介大手の三鬼商事がまとめた大阪市中心部のオフィス平均空室率は11月で4・21%だった。前月の3・96%から0・25ポイント上昇したが、1月以降でみると需給均衡の目安とされる5%を下回る状態が続く。 大阪駅周辺では今年3月に「JPタワー大阪」、7月に「イノゲート大阪」と、いずれもJR西日本などが手がけるビルが相次ぎ完成。同駅北側の再開発地域「うめきた2期(グラングリーン大阪)」のオフィス棟が11月に竣工するなど、オフィスの供給ラッシュが続いた。しかし、企業側の需要が高く、空室率は3月には4・77%に上がったものの、その後は下落傾向が続いた。 今年の大阪でのオフィス供給量は過去最大規模だった。ただ、08年のリーマン・ショック以降、オフィス供給量が絞られていたことや、交通アクセスに優れる大阪駅周辺では「JPタワーやグラングリーンのような大型開発を行えるだけの土地がほかにない」(三鬼商事の担当者)ことなどから、企業のオフィス移転を後押しし、空室率を押し下げたという。 これらの新ビルではまた、入居する企業の従業員が働きやすい環境が整えられているのも特徴だ。会議室などを各社の共用にして、社員向けにより広いスペースを使えるようにしたり、社交場のようなラウンジやサウナを設置するビルもある。優秀な人材を獲得するための企業間競争が激しくなるなか、コストがかかっても、これらの立地や設備を備えたオフィスが選ばれている。 大阪ではミナミと呼ばれる難波周辺エリアでも、空室率は11月時点で1・93%と低かった。新型コロナウイルスの影響が落ち着き、訪日客関連のビジネスが回復していることなども、オフィス需要の上昇に寄与しているもようだ。(黒川信雄)