「驚いたことに…」“孤独だった”サンドロ・トナーリはどう生まれ変わったのか。あの事件からの日々【コラム】
●トナーリがサポーターから絶大な支持を受ける理由とは?
「驚いたことに、出場停止期間中、みんなが寄り添ってくれたんだ。ニューカッスルに移籍してまだ2ヵ月しか経っていなかったのに、チームもサポーターも全力で僕をサポートしてくれた。ブルーノ・ギマランイスとジョエリントンは、最も支えてくれた2人だ。 それから、(キーラン・)トリッピアーと主将の(ジャマール・)ラスセルズも手助けしてくれた。復帰は素晴らしく感じた。それはまるでサポーターが自分のために熱狂しているのを見るような感覚だったよ。今はコンディションがいいし、本当に良くなったと感じている」 8月28日のカラバオ・カップ2回戦ノッティンガム・フォレスト戦で実戦復帰を果たした。その姿を目にした誰もが、出場停止期間中に、しっかりと自分を鍛え直していたという印象を得たはずだ。 こうして、イタリア代表にも返り咲き、9月6日の代表復帰初戦となったUEFAネーションズリーグの一戦では、16年ぶりのフランス代表撃破に貢献。11月14日の同ベルギー代表戦では、代表初ゴールもマークした。 ルチアーノ・スパレッティ監督にとって、不可欠な存在となった。代表監督は手放しで絶賛する。 「トナーリはとてつもない選手だ。どれだけ試合が続いても問題ない。エンジンをかければ全力で走り、ガレージに戻しても再び全力で走れるパワーを備える」 その言葉の通り、復帰してからの代表戦6試合すべてに先発出場し、5試合にフル出場している。ピルロのような飛び道具、FKを擁してはいないが、2列目からの飛び出しでゴールを狙う嗅覚を持ち、守備での貢献は計り知れない。躍動感溢れるエネルギッシュなMFだ。 クオリティーの高さを備え、そして、人として魅力的な側面を持つことから、過ちを犯しても、サポーターから絶大な支持を受けているのだろう。プレミアリーグで熱烈な人気を誇ったイタリア人といえば、チェルシーでプレーしたジャンフランコ・ゾラだ。“マジックボックス”の異名を持ち、チェルシー史上最高の選手の一人となった。 トナーリは、アタッカーだったゾラとはポジションこそ異なるが、クリエイティビティではゾラに劣らない非凡なものを擁している。ゾラのようにファンからの圧倒的な支持を受ける可能性を秘めたプレーヤーだ。 10月には、レアル・マドリードからの関心も噂されたが、10ヵ月もの間、辛抱強く復帰を支えたサポーターを裏切るわけにはいかないだろう。禊はまだ済んでいない。クラブが最後に獲得した主要タイトルは1954/55シーズンのFAカップ。サポーターのためにも半世紀以上も忘れてしまったタイトルをもたらすことはサンドロの使命だ。 (文:佐藤徳和)
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