「驚いたことに…」“孤独だった”サンドロ・トナーリはどう生まれ変わったのか。あの事件からの日々【コラム】
昨年10月、複数のイタリア人選手がサッカー賭博に手を染めていたというニュースはサッカー界に衝撃を与えた。そのうちの一人であるサンドロ・トナーリが10ヵ月の謹慎期間を経て、ついにピッチに戻ってきた。復帰後、目覚ましい活躍を見せているトナーリにはどんな変化があったのか。現在の姿に至るまでの物語を振り返る。(文:佐藤徳和)
●驚きを与え続けるサンドロ・トナーリ
2023年、サンドロ・トナーリは3度の驚きをもたらした。 一つは、ミランからニューカッスルへの移籍だ。6400万ユーロ(約102億4000万円)の移籍金は、イタリア人史上最高額での取り引きだった。契約は5年に及ぶ長期のもの。金額、期間ともに申し分のないものだった。 8月12日の開幕節、アストン・ヴィラ戦ではポジティブな驚きをもたらす。開始6分、左サイドからのアンソニー・ゴードンの折り返しにトナーリが豪快なジャンピングボレーを叩き込み、先制点を挙げる。セント・ジェームズ・パークの大観衆を熱狂の渦に巻き込むゴール。センセーショナルなプレミアリーグデビューを成し遂げた。 しかし、7月3日の移籍正式発表から3ヵ月後の10月12日、もう一つの衝撃を与えた。それは完全にネガティブなもので、全てのファンを愕然とさせるものだった。 サッカー賭博への関与。ユヴェントスのニコロ・ファジョーリが、サッカー賭博に手を染めたことが明るみに出ると、当時アストン・ヴィラでプレーしていたニコロ・ザニオーロ(現アタランタ)とトナーリも警察当局から捜査を受け、コヴェルチャーノ・トレーニングセンターで行っていたイタリア代表トレーニングキャンプを去った。 イタリア・サッカー連盟(FIGC)の検察による捜査の結果、トナーリは賭博を行っていたことを自白。18ヵ月の出場禁止処分が下され(うち8ヵ月はリカバリープログラムの実施による執行猶予)、最終的には10ヵ月の処分期間を強いられた。 賭博を行っていた試合は50以上にも及び、ギャンブル依存症に陥っていた。トナーリは助けを求め、“病い”との孤独な戦いが始まった。