ヴァージル・アブローが手がけたルイ・ヴィトンでの最後のコレクション。
ヴァージル・アブローの逝去から約2カ月。未だ彼の死が惜しまれるなか、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)で生前にデザインした最後のコレクションが発表された。
1月20日、ヴァージル・アブローが生前にデザインしたルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)での最後のコレクションが、パリ3区にある多目的文化ホール「カロー・デュ・テンプル」で発表された。「ルイ・ドリームハウスTM」と題されたコレクションは、ヴァージルがメゾンで手がけた8シーズンのテーマとメッセージが集約されたもの。昨年末、WWDがルイ・ヴィトン会長兼最高経営責任者のマイケル・バーク氏に取材した記事によると、コレクションのほぼ9割は、彼が亡くなる前にすでに完成しており、一緒に働いていたスタジオチームによって最後の仕上げが行われたという。 会場のセットでは、魔法がかかったようにダンサーが重力に逆らって踊ったり、床から家具が飛びたり、ベッドが回転したり。国籍や肌の色もさまざまなモデルたちが、色とりどりの服に身を包み、胸を張って歩いている。それは、どんなことでも可能だと信じて疑わない子どものような視点を通して、世界を見るべきだと伝え続けたヴァージルからのメッセージのように思えた。
ショーは、ヴァージルとの会話からインスパイアされた曲をオーケストラが演奏するなか始まった。ファーストルックを皮切りに、黒の服が連なって登場。端正でエレガントなテーラリングを印象づけた。トラックスーツ、スニーカー、キャップ、スカート、オーバーサイズのジャケットといった彼のシグネチャーも忘れてはいない。だが、とても穏やかで、謙虚で、調和のとれた、彼の生前の心境が反映されたようなコレクションだった。 さらに、タペストリーや転写プリントに描かれたジョルジョ・デ・キリコの絵画「イタリア広場」に見るように、シュルレアリスムがコレクションの鍵に。ストリートだけにかたよることなく、伝統的なソースからアイデアを手繰り寄せるところも彼の手腕のひとつだった。新作のレザーグッズは、見慣れたモチーフをウィットに表現。ペンキ缶に見立てた鮮やかなバッグや、滲んだようなルイ・ヴィトンのモノグラムも登場した。