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スーツケースから覚醒剤「無罪」にネットで賛否 「違法な税関検査」の問題点

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弁護士ドットコム

覚醒剤をスーツケースに隠して輸入したとして、覚醒剤取締法違反などの罪で起訴されたスロバキア国籍の男性が、「税関の検査には重大な違法性がある」として無罪になった判決がネットで話題となっている。 【写真】元ヤクザのうどん、福岡名物になる 報道によれば、男性が成田空港の税関でスーツケースを解体して検査する同意書への署名を拒否したところ、税関職員が同意や令状がないにもかかわらず、カッターなどで破壊し中から覚醒剤を見つけたという。 千葉地裁(岡部豪裁判長)は、一連の検査は違法であり、その違法な検査で得られた覚醒剤の証拠能力を否定。男性に無罪を言い渡した。 ツイッターでは、「異常な検査」、「正当な手続きを踏むべきだった」といった肯定的な声がある一方、「犯罪者の味方してどうするんだ」「現に薬物が出てきているのに無罪っておかしくない?」など判決に批判的な声も少なくない。 判決で重大な違法があるとされ、結果として無罪の理由となった税関検査の何が問題だったのだろうか。髙橋裕樹弁護士に聞いた。 ●スーツケースの解体には、本人の同意もしくは令状が必要 ーー税関検査の何が問題だったのでしょうか 「被告人は税関によるスーツケースの解体を承諾していませんでした(裁判所はこのように判断しました)。 そこで本件では、税関検査で、被告人の承諾なくスーツケースを解体することができるのかという点が争いになりました。 そして、裁判所は被告人の承諾なくスーツケースを解体することは違法だと判断しました」 ーー被告人の承諾がなければ、スーツケースは絶対に解体できないのでしょうか 「確かに税関検査で禁制品の持ち込みが疑われているのに、所持者が検査に反対したからといって一切検査できないのであれば、税関検査の意味がなくなります。 しかし、憲法35条でも刑事訴訟法でも、裁判所が発した令状がなければ所持品の捜索(所持品を解体等して中身を確認すること)を受けない権利が保障されています。これを『令状主義』といいます。 税関検査は犯罪捜査ではなく行政手続ですが、だからといって、好き勝手にスーツケースを解体していいはずはありません。まずは所持者を説得して、もしこれに応じないなら裁判所から令状を取ってくるべきだったはずです」 ーー承諾がないなら、令状が必要な場合だったということですね 「そうです。にもかかわらず、税関は十分な説得もせず、さらに令状を取ることも省いて、勝手にスーツケースを解体したのですから、令状主義の精神に反する重大な権利侵害を行ったことは明らかです。 それゆえ裁判所は、『税関は、被告人の承諾もなく、裁判所の令状もないのに、勝手にスーツケースを解体して中にある覚醒剤を押収したのだから違法性が重大』と判断したのです」 ●捜査上の重大なルール違反には、「無罪」という厳しいペナルティ ーーしかし、覚醒剤が実際にスーツケースに入っていたようです。密輸しようとした被告人を無罪放免にしてよいのでしょうか 「これは刑事裁判のルール違反に対する厳しいペナルティと考えていただければと思います」 ーーどういうことでしょうか 「たとえば、オリンピックではドーピング(競技能力を高めるために薬物などを使用すること)というルール違反に対して厳しいペナルティが課されています。 仮に100mを8秒台で走れたとしても、ドーピングをしていれば記録として認められません。さらに国家単位でドーピングを行わせていた場合、その国の選手はドーピングをしていない選手も含めてオリンピック出場禁止という厳しい処分を受けることがあります」 ーーソウル五輪でのベン・ジョンソン(ドーピングで世界記録と金メダル剥奪)や平昌五輪でのロシア選手団(ロシア代表としての出場禁止)を思い出します 「人の権利を一方的に侵害する側面がある捜査についても、裁判所のチェック(令状)を事前に得る等の厳しいルールが定められています。 そして、そのルールの1つとして、『犯罪行為に該当するような違法な方法を用いて取得した証拠は、たとえ重大犯罪の重要な証拠であっても、裁判では使うことができない』という厳しいルールがあります。これを『違法収集証拠排除法則』といいます。 今回税関の行った行為は器物損壊罪等に該当する違法な行為です。 そのような違法な行為によって得られた証拠(覚醒剤)は、覚醒剤密輸という重大犯罪の立証にとって最も重要な証拠ですが、違法収集証拠ですので排除、つまり裁判で使えなくなります。 その結果、覚醒剤を密輸したという犯罪なのに、その覚醒剤自体が証拠として裁判所に出せないことになるので、当然無罪ということになる、これが今回の判決です」 ーーたとえ無罪にしても、ルール違反を許さないということなのですね 「一般の感覚では、犯罪者を野に放つのはおかしいと感じられる方も多いとは思います。確かにその通りだと思います。 しかし、捜査という重大な権限を持つ捜査機関等は厳しいルールを守らなければなりません。捜査機関は、違法捜査のような重大なルール違反を行うと、犯罪者を野に放つことになるということを改めて肝に銘じるべきだと思います」 【取材協力弁護士】 髙橋 裕樹(たかはし・ゆうき)弁護士 無罪判決多数獲得の戦う弁護士。依頼者の立場に立って、徹底的に親切に、誰よりも親切でスピーディな、最高品質の法的サービスの提供をお約束!でも休日は魚と戦う釣りバカyoutuber弁護士!(https://www.youtube.com/channel/UClg_UagOk4xl9OXpILDc4Fg) 事務所名:アトム市川船橋法律事務所 事務所URL:http://www.ichifuna-law.com/

弁護士ドットコムニュース編集部

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