時価総額は国内4位のキーエンス、過去最高益を記録して迎えた株主総会に個人投資家が抱いた不満
「株主からの質問にまともに回答しない。いわゆる短時間のシャンシャン総会で、不満の残る株主総会だった」 【写真】キーエンスの株主総会後に公表された、会社議案に対する株主の賛成率 6月10日に大阪府高槻市で開かれたキーエンスの定時株主総会。株式を長年保有しているという個人株主が総会終了後に述べた感想だ。 キーエンスは、部品の形状などを検出するセンサーを中心にFA(ファクトリーオートメーション)関連製品の企画・開発、販売を行っている。営業利益率50%台の高収益企業、従業員の平均年収が2000万円の高年収企業と形容され、時価総額(約11兆円)は、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループに次いで4番手だ。一方、事業拡大を優先する同社は外部への情報発信が極めて限られる。
■株の保有には500万円近い資金が必要 株主総会で質問に立った個人株主は、1株を10株に分割する株式分割の要望を意見した。そのうえで、キーエンスの株式を購入する際に必要となる最低投資金額の水準についての認識と、株式分割にどのようなデメリットを感じているのかを経営陣に質問した。 国内上場株式の売買単位は100株。キーエンス株の場合、現在の株価からすると最低投資金額は約470万円となる。個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、東証が望ましい水準として示す「5万円以上50万円未満」と大きな開きがある。
中田有社長は、株主からの質問に対して、「株式分割をすれば(株主が増えて)多くの方に応援してもらいやすくなる」と回答。そのうえで、デメリットについては多くあるとして、「これが1つの要因と伝えることは難しい」と説明するにとどまった。 具体性を欠いた説明に冒頭の個人株主は「時価総額4位の社長のコメントとしては残念」と話す。 総会では、株価と配当の水準や業績予想についての質問も出たが、特筆すべき回答はなかったという。なお、創業者の滝崎武光名誉会長(77歳)は、総会で一言も発しなかったものの、「『動かざること山のごとし』で存在感は大きかった」(総会に出席した株主)。