ニート170人超「全員が取締役」今月会社を設立へ
すでに30程度の「事業」案
「社内」では、すでにグループに分かれて、思い思いの「事業」を考え、進めている。事業案は現在、30案くらい生まれているという。ゲームやTシャツ、いろいろな場所の空気を入れた缶詰の作成や、ニート問題を解決するための「ニート総研」というプランまである。仲間たちでTシャツを作成していた男性に話を聞くと、「Tシャツはきょう記念すべき第1作が完成した。ロゴは自分たちのデザイン。売れたらいいけど、作りたいから作った」という。 だれがどの「事業」に参加するかは各自の判断に委ねられている。まだ現段階では、自分がどの「事業」に参加するか決めかね、様子見しているメンバーもいれば、いわゆるお金を稼ぐ「事業」には参加せず、会社の「運営事務」を希望するメンバーもいる。とにかく自分がやりたいことを無理せずやる、ということがコンセプトのようだ。全員が対等で、組織としての「リーダー」を置かない方針のため、普通の会社のように「辞令」で動くようなことはないというわけだ。
誰も「雇われていない」環境
そもそも、どうしてニートによる会社を作ろうと思ったのか。 立案者の安田さんは「ニートが好きなことをやって、それによって生まれた利益を分配すれば、うまく機能するのではないかと思った」と語る。なぜ全員が取締役なのか、という問いに対しては「雇う人も雇われる人もいない。つまり、誰も『雇われない』を環境を作るために、全員を取締役にした」のだという。そして「この会社で利益が出て普通のサラリーマンより稼ぐようなことがあったら『革命』。いま日本に約60万人以上いるニート全員が加わってくれるのを目指す」と展望を語る。
ニートの「潜在能力は高い」
現場でニートたちの相談役としてプロジェクトを進める若新さんは、どう考えているのか。 若新さんは、ニートたちの潜在能力の高さを指摘する。「例えばネットスキルとか、非常に高い能力を持っている人もいる。彼個人では、世間的には『マイナス』かもしれないし、1人では社会でやっていけないかもしれない。しかし、何人かで集まって組み合わさることで、彼の『プラス』の能力を発揮できる環境が生まれることがある。今の社会はマジョリティにしか手を差し伸べない。確かに彼は1人で満員電車に乗れないかもしれないが、そこはみんなでうまく補い合う社会があってもいいんじゃないか」。 そしてニートたちの活動を、幕末の脱藩浪士に重ねあわせる。「ニートたちに対する普通のアプローチは会社生活に戻らせようとするもの。だけど、もう『脱藩』したんだからもう『藩』には戻りたくないはず。就職じゃない方法で彼らの能力を引き出したい」。 ただ、それにはニート自身の発想の転換も必要で、「脱藩したんだから『刀(普通の会社の方法論)はどうするんですか?』と僕らに聞いていてはいけない」という。若新さんは、新しい発想が生まれる環境を重視。そのために「指示命令系統をつくらない」「明確なルールをつくらない」という方法論を徹底している。彼らのアイデアの幅を制限したくないからだという。