【M235iやAMG A35を迎撃】新型 アウディS3サルーンへ試乗 親近感な高性能 後編
並外れて高いS3の動的性能
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) アウディS3サルーンには、スポーツ度の高いスプリングとダンパーが与えられているものの、日常的な親しみやすさを忘れていない。この上にRS3が存在するがゆえの余裕といえるが、この乗りやすさこそS3の高い強い人気を支える要因の1つだと思う。 【写真】S3とA3 A 35とM235iを比較 (105枚) かといって、英国郊外の制限速度、97km/hを超えるような速度域で、生ぬるい走りに収まっているわけではない。MTでリア寄りの駆動配分が与えられたモデルの方が、ドライバーはより遊べるし笑顔になれると思う。それでも、S3の動的性能は並外れて高い。 最新のS3を運転して感じた最初の驚きは、これまで弱点の1つだったステアリング。従来はリモート感の強いものだったが、ダイレクトさを増し、適度なフィードバックを獲得している。 シャープに旋回しながら、狙ったラインへS3をきれいに乗せていける。コーナーの出口めがけて、自信を持って積極的にパワーをかけていける。 コーナー進入時にアクセルを一気に戻すと、制御を失わない範囲で、リアタイヤをスライドさせることも可能。これまでのアウディには、見られなかった動きだ。 姿勢制御も好印象。アダプティブ・ダンパーならさらに良いのだろう。路面と呼吸を合わせるようなサスペンションの動きは、優れた安定性も生んでくれる。
比較的構成の薄いドライブトレイン
ブレーキも充分に強力。ダイレクトな感覚のまま、確かな制動力を引き出せる。グリップ力にも優れ、高い速度域を保ち、目的地まで容易に運転できるというS3の特長は従来どおり。そこへ、ドライビングファンがプラスされている。 パワートレインは、比較的個性が薄い。アクティブ・サウンドジェネレーターを最も積極的なモードにしても、エグゾーストノイズは筋肉質なものの、文化的な範囲。変速時のマフラーからの破裂音は、車内でわずかに聞こえる程度だ。 エンジンは高回転域ではエッジの効いた、ザラついた音色を響かせる。しかし、アクセルオフで重なる甲高いうなり音が、少し不自然に感じられた。刺激は少ないものの、充分な聴き応えはある。 EA888型エンジンは、回転数が2500rpmを超えた辺りでターボラグも消えると、たくましいトルクを湧出。そのまま、レッドゾーンめがけてパワーは右肩上がりに上昇していく。 7速デュアルクラッチATの動きも、もどかしいところはない。クルージング時は、滑らかに必要なギアを選択。ペースを速めれば、ドライバーの気持ちに合わせるように、素早く変速を決めてくれる。 オプションのアダプティブ・ダンパーを装備すれば、S3サルーンは、さらに高次元の動的性能を味わわせてくれるだろう。筆者としては、サウンド面でのアピール力は、もう少し濃くても良いと思う。