再び人を殺す可能性「あると思います」…自作の刃物で二十歳の頃からの殺人願望を実行、初対面の女性を殺害…精神鑑定で『性的サディズム』による障害と診断
2023年9月、石川県白山市のホテルで当時23歳の女性が刃物で殺害された事件。逮捕から1年あまり、先日、裁判員裁判が開かれ、男には懲役30年の判決が言い渡された。この裁判で明らかになったのは被告の男が以前から抱いていた殺人への憧れだった。 【画像】法廷で話す被告
二十歳の頃からの殺人願望を実行
2024年11月7日、金沢地方裁判所。84席ある椅子のほとんどが埋まった法廷に黒いスーツで、青いネクタイを締めた男が大股で急くように入ってきた。 白山市の無職、中村信之被告55歳。 2023年9月11日、石川県白山市のホテルで、初対面の女性(当時23)を刃物で刺して殺害したとして殺人などの罪に問われている。 起訴内容に間違いがないか裁判長が問おうとすると… 中村被告: 間違いありません。 裁判長: いずれの事実も間違いないですか? 中村被告: 全て間違いありません。 中村被告は裁判長の言葉を遮るように、ハッキリした声で起訴内容を全て認めた。 まず明らかとなったのは中村被告の動機。 検察は法廷で「中村被告は仕事も金もなくなって自暴自棄になり、以前から持っていた”人を殺したい”という願望を果たそうと考えた」と指摘。 二十歳ごろから持っていた「人を殺したい」という殺人願望。人を刺したら面白いんじゃないか、との思いから妄想や幻想を繰り返していたという。中村被告は法廷でこう述べている。「若い女を殺したいとか、気にいらない奴をバッドで殴りたいというのがあった」 その対象の多くは「若い女性」。背が高く美しい、アナウンサーのような女性を見ると「車に引きずり込んで乱暴した後、首を絞めて殺したい。山に連れていって埋めたい」と思っていたそうだ。 続いて明かされたのは、犯行当日まで中村被告がどう生きてきたか。
出所後1年足らずでの犯行
事件の約10カ月前、中村被告が生活していたのは刑務所の中だった。 2016年、パチンコ店敷地内のゴミ捨て場でコーヒーレディの女性を刺し、2022年11月24日までの4年6カ月、傷害罪で服役していた。その前には実の妹の首を絞めて殺そうとした殺人未遂の罪でも服役。中村被告には前科11犯の犯罪歴があり、そのうち2つは女性を攻撃したものだった。 傷害罪での服役を終え、能美市内の鉄工所で働き始めた中村被告。その時の心境を次のように述べていた。「仕事が決まってとりあえずホッとしました。人生をやり直すというよりも生活をしていけるのかという不安が大きかったので、それが解消されるという気持ちが大きかった」 この鉄工所で作ったのが今回、女性を刺した刃物だった。全長29センチ、刃体は18.8センチで、鉄工所の機械を使って家にあった鉄やすりを削って作ったという。切れ味は冷凍した鶏肉を切って確かめていた。 中村被告はその自作の刃物を段ボールの鞘に入れて持ち歩いていたという。その理由は「未完成だったので、会社に置いておくわけにもいかなかったから」だったという。これ以外にも中村被告は100本ほどの刃物を自作していたと言う。 事件10日前。中村被告は仕事を無断欠勤した。欠勤の理由は「酒を飲みすぎた」ことによる寝坊。その勤務態度について鉄工所の工場長はこう話している。「仕事中は一生懸命で真面目だった。でも遅刻は頻繁にしていて、無断欠勤もあった。勤務姿勢には不信感を持っていた。出勤してきたときに酒臭かったことがある」 毎日ウイスキーや500ミリのストロング缶を3本ほど、多い時に5~6本は飲んでいたという中村被告。自身がアルコール依存症予備軍であると自覚していたようだ。その後も無断欠勤を続けていた中村被告だったが、勤務先から「保険証を返すように」という旨の留守電が入っていることに気が付き、解雇されたと思い込む。 失職し、将来が見えなくなったことで自暴自棄になった中村被告。パチスロや飲食ゲームの課金に風俗代など2日間にわたり散財した結果、残高は237円に。中村被告に残ったのは自作の刃物だけとなった。これが中村被告の妄想を現実にするきっかけとなる。