再び人を殺す可能性「あると思います」…自作の刃物で二十歳の頃からの殺人願望を実行、初対面の女性を殺害…精神鑑定で『性的サディズム』による障害と診断
突然、娘を奪われた母親の悲痛な思い
「人を殺してみたかった」という身勝手な思いから突然命を奪われた女性。その調書には娘を失った悲痛な思いが綴られていた。 被害者の母: 私はA(被害者)の母です。事件から3か月経った今でも娘が帰ってくるのではと、しかし、帰ってこない現実を受け入れている毎日です。 娘は元夫との間に生まれた長女で、福岡県で生まれました。娘には3歳年上の長男がいます。元夫の不規則な勤務状態からすれ違い、離婚しました。平成26年8月に親権が私に認められ、3人での生活を始めました。当時子どもたちは高校生や中学生だったので、急に名前が変わるのはかわいそうだと、旧姓に戻すことはしませんでした。そのあと息子は神奈川県内で仕事に就き、娘と2人で生活することになりました。娘は帝王切開で生まれ、看護師さんがお腹の上に乗せてくれたときに、なんて可愛いんだと感動したことを覚えています。病気もせず健康で、いつもニコニコしていました。性格は内弁慶で、人見知りで、人と打ち解けるまでに時間がかかりました。でも頑固なところもあり、苦い薬を飲まずにテーブルの下に隠れ、動かないこともありました。 娘は親思いの優しい子でした。親が母だけになり寂しい思いをさせたこともあると思います。それでも『産んでくれてありがとう』と手紙をくれたりする優しい子でした。高校では保育科を卒業し、地元の饅頭屋さんで働き始めました。仕事内容が嫌になったのか半年でやめ、特産品の油揚げを作る会社に入りましたが、仕事が嫌になったのか無断欠勤をするようになり、髪を赤く染めたりするようになりました。令和3年の5月、友達の家に外泊して、会社を無断欠勤しました。会社から電話連絡があり、娘に腹が立ちました。娘はその日の午後7時半に何も言わずに帰ってきてそのまま寝ていました。また腹が立ち、無断外泊などを注意しました。娘は何も言わずに外へ出ていきました。言い過ぎたかなと思っていると30分ほどで娘が帰ってきました。お風呂に入って出て来た娘に『カレー食べる?』と聞くと食べると言いました。その後、『友達の家に泊る、2~3日で戻る』と言うので駅まで送りました。それが生前の娘を見た最後で、こんなことになるとは夢にも思いませんでした。それから数日が経っても娘が帰ってこず、電話もつながらず、ラインも未読スルーとなりました。令和3年7月、警察に捜索願を出しました。携帯ショップにも行き、GPSの位置情報が博多市で反応したので安心しました。それから半年くらい経ったころ既読がつき、誕生日に『元気?』と送ると『元気だよ』と返信がきました。 そして令和5年9月、昼頃に警察が来て『娘が亡くなったかもしれない、石川県の警察から連絡があるので対応してほしい』と言われました。現実とは思えませんでしたが、すぐに石川県に向かいました。『犯人に殺害された』と言われ、間違いであってほしいと思いました。霊安室で顔を見てすぐに娘だと思いました。やっと会えた、と全身の力が抜け、涙が止まりませんでした。刺されて傷だらけだと思っていたのですが、警察の方が綺麗にしてくれていたので、娘は眠っているようでした。ですが、話しかけても身動き一つしませんでした。刑事さんから『中村信之という男に刺された、そのショックで亡くなった』と聞きました。男性に刺され、息絶える中でどんなに苦しい思いをしたか、怖かっただろうかと娘が不憫です。なぜ娘は人生を奪われなければならなかったのでしょうか。娘はまだ若く、これから結婚して、子供を産んでいたと思います。23歳で理不尽に人生を奪われ、私が力づくても制止していればと後悔しています。娘を返してほしい。私の一生の宝を奪ったことは絶対に許せません。厳しい処罰を下すようお願いします」 殺人願望を果たした中村被告。取り調べの中で「反省も後悔もしていない。強いて言えば被害者はかわいそうだと思う」と話していた。中村被告はこう述べている。「人を殺してさっぱり、スッキリしたという気持ちと、罪悪感をはかりにかけたら、スッキリした方が大きいように思う。だから後悔というものがないという話になる」裁判中も一貫して後悔はないと話す中村被告。 中村被告の精神鑑定を行った医師の証言によると事件当時の被告には「完全責任能力があった」という。同時に2つの精神障害を抱えていることが分かった。 一つは「反社会性パーソナリティ」社会の規則や法律を守らず良心の呵責が欠如していて、他人を傷つけることなどに罪悪感を持たない障害である。 小学校3年生の時から万引きに手を染めていた中村被告。小学校高学年のときには同級生をコンパスで刺し、中学生になると仲間をバットで殴ったという。こうした幼少期からの暴力行為は反社会性パーソナリティの兆候だと医師は話した。 そして、もう一つは「性的サディズム」他者に対し、身体的・心理的な苦痛を与えることで強烈な性的興奮を覚える障害だ。 「普通に性行為しても満足せず、相手が苦しむ姿を見ると興奮する。相手を引きずり回したり、首を絞めて殺さないでと言われたり。相手を支配下に置きたい思いがある。逆らわれないように、言うことを聞かせるには暴力が一番いい」と医師に話したという。 「支配」や「暴力」。そして「人を殺したい」という願望。それについて中村被告はこう話した。 中村被告: 抽象的だけど、心の中に魔物を飼っている感覚がある。コンプレックスや、上手くいかない自分への苛立ち、破壊衝動や願望、そうした中に殺人願望が含まれている。 検察に「今後も人を殺してしまう可能性があるということですか?」と問われると中村被告は… 中村被告: (今後も人を殺してしまう可能性は)あると思います。 今回、法廷には証人がもう一人出廷した。前回の事件で中村被告を弁護した弁護士だ。事件のあと、中村被告から接見したいとの要望があったという。 前回の事件を担当した弁護士は「本人は出所後、自分なりに一生懸命頑張ってきたつもりだったけど、自分の中には魔物がいて、他人に抱いているコンプレックスが大きくなって、世間に恨みのような感情が出てきて、それが大きくなって爆発したと」と証言。弁護人が前回のときと様子は違ったか尋ねると、「話し方や態度は変わらないが、このような事件を起こして、重大な結果を残して、この先の自分の人生を考えるべきではないという様子だった」と言う。また、中村被告はこの弁護士に「私は人間として大切なものをなくしてしまった。人を殺すのは自分を殺すことと一緒だ」と手紙を送っていたと言うのだ。 これについて中村被告は、「人間性といったものですかね、事件への反省も後悔もないし、普通はするのにそれが出てこないというのは大事なものがなくなったという意味合いです」と答えている。中村被告は、「被害者の可能性をゼロにした以上、自分の可能性もないと考えたので、これから先のことは考えたくないという思い」と述べ、被害者に対し、今何を思うか尋ねると… 中村被告: かわいそうなことをしたと思っています。遺族の苦しみはこの先も続くわけで、それを考えるとかわいそうだなと思います。