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【福島から伝えたい】コロナ禍の震災10年目 あの「問題の水」は海に放出するのか?

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福島中央テレビ

■結局、誰が決める?

 今年2月末に福島第一原発を視察した国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長は、「トリチウム水の処分方法の決定は、日本政府が行うのが基本」と話すが、果たして日本政府が海洋放出を判断することはできるのだろうか?  原発事故後の福島の環境回復に取り組む環境省は批判の声に晒されている。  去年9月、環境省の原田義昭前大臣は記者会見で「海洋放出しか方法がないというのが私の印象だ。」と述べた。これに対して漁業関係者から反発の声が上がり、その後、後任の小泉進次郎大臣は「福島の皆さんの気持ちをこれ以上傷つけないような議論の進め方をしないといけない。」と海洋放出に慎重な姿勢を示した。この発言に対して、今度は科学者や専門家から「無責任」などと批判を浴びることになった。  小泉大臣の発言を受けて、福島から遠く離れた大阪市の松井一郎市長は、「科学的根拠を示して海洋放出すべき。大阪まで持ってきて流すなら協力の余地はある。」と大阪湾への放出容認を示唆する発言をした。しかし、これも周辺の自治体や漁業関係者から多くの反発をかう結果となった。現在は、廃炉作業を担う経済産業省が中心となり自治体や関係者から「御意見を伺う場」を開催し、トリチウム水の処分を最終判断しようとしているが、意見がまとまる気配はみられない状況となっている。

■トリチウム水の排出 消費者の半数以上「知らない」

 福島第一原発の事故では、外部へ飛散した目に見えない放射性物質が多くの人に恐怖感を与えた。様々な専門家が安全性と危険性の両方を語り続けた。暑い夏もマスクに長袖姿で登校した子どもたちは、放射能を避ける代わりに屋外での運動を制限され、体力低下や肥満を招いた。父親を福島に残し県外に避難せざるを得なかった家族は、二重生活の負担だけでなく差別や偏見にも晒された。自主避難でそのような二重生活を経験し数年後に福島に戻ってきた母親(44歳)は当時をこう振り返る。 「放射能から逃れて健康を守るってことよりも家族が離れ離れになることの方が、私たち家族にとっては大きいリスクなんじゃないかと、パパとサヨナラして1時間ぐらい泣く子どもを見てずっと感じていました。」  それぞれが生活の中でリスクとバランスを取ることの重要性は、「トリチウム水」の問題にも当てはまる。廃炉計画に支障となるリスクと、放出した場合に生まれる「新たな風評被害」のリスク…。ただ、「トリチウム水」の問題は、専門家と関係者の間での議論にほぼ留まりっている。国民に対するリスクの説明が不足したままで、「正しく怖がる」ための土俵にも立っていない。  東京大学などが福島県、宮城県、茨城県、東京都、大阪府の消費者1500人を対象に行ったアンケート調査がある。この中で、トリチウム水が世界中の原発から排出されていることを「知らない」と回答した人は74%にも上る。また、海や大気に放出する可能性を検討していることですら、半数以上の53%が「知らない」と回答している。  原発事故後に自主避難女性を経験した女性(前述)に、風評被害をなくすために必要なことを聞くとこう答えた。「行政、市民、生産者、消費者みたいに分かれるんじゃなくて、お互いにできるところ、できないところを話し合う場がないだけじゃないのかな。」多くの国民が「知らない」状態を解消する前に、議論は最終決定に向かおうとしている。 ※動画は福島中央テレビのローカルニュース(福島地区)で放送した内容のダイジェスト版です。 ※この特集は福島中央テレビとYahoo!ニュースの共同連載企画です。

福島中央テレビ

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