「田舎暮らし」の断片(3)── 「土地」というでっかい画用紙に夢を描く
老後の「コミュニティ」も構想
来春、自宅近くに着工する6棟のうちの1棟は『MORiSH』のモデルルームとなる。完成後は「別荘地内別荘」として、自身でも利用する予定だ。お客さんに提供してきた快適な八ヶ岳ライフが、やっと自分のものになる日も近い。 友枝さんの構想は、『MORiSH』の家に住む仲間たちとの「老後」にも及ぶ。 「やがて40組、50組と移住者が増えるでしょう。皆が同じように歳をとるわけですから、お金を出し合ってペンションを一棟買ってリフォームし、デイケアのシステムのようなものを作ることも考えています。例えば、そこに若者を無料で泊め、食事を出す代わりに『薪割りしろ』『僕らの介護をしろ』と働いてもらうわけです」。若者に田舎暮らし体験の場を提供し、世代間交流を兼ねながら介護施設としての役割も果たす。実現すれば、一石三鳥の夢のシステムだ。 今、友枝さんの周囲に出来つつあるこうした「土地という画用紙に描いた夢」は、「田舎暮らし」の相互扶助組織、あるいは「村」という行政単位の中にある、もう一つの小さなコミュニティだと言ってもいいかもしれない。そこに集う人々を結びつけているのは、かつてのヒッピー・ムーブメントを牽引した「イデオロギー」や「思想」といったオドロオドロしいものではない。「田舎暮らし」というライフスタイルに対する、ゆるやかな「共感」と「現実的なニーズ」だ。「理屈っぽい」と友枝さんに怒られてしまいそうだが、このあたりの違いに気づける時代感覚を持つことは、結構大事だと僕は思う。 ・連載『田舎暮らし』の断片…全4回