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医療界には「弱い追い風」 医療経済学者が新型コロナの影響を前向きに捉えるわけ

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BuzzFeed Japan

新型コロナウイルスの流行で、通勤、通学、人付き合い、イベントなど私たちの生活は一変した。 中でも大きな打撃を受けたのは医療だ。 医療者は自らが感染するリスクを引き受けながら必死で診療にあたり、感染者を診ない医療機関では受診控えが起きて経営が圧迫されている。 100年に一度とも言われるこの疫病によって、私たちの健康を守る医療体制はどれほどのダメージを受けたのか。 医療政策や医療経済が専門の研究者で医師の二木立さんは、「中期的には、新型コロナは日本の医療の『弱い追い風』になる」と前向きな評価をしている。 いったいどういうことなのか。再び東京でじわじわ感染者が増える中、二木さんにお話を伺った。 ※インタビューは6月29日午後、対面で行い、その時点での情報に基づいている。 【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】

コロナ対策の反省から保健所の機能強化と病床削減の見直しへ

ーー新型コロナウイルスの流行は、日本経済にも医療体制にも大きなダメージを与えました。それにもかかわらず、二木先生が医療に対して「弱い追い風になる」(※1)と前向きに評価されたことは驚きました。 コロナ問題が日本経済に重大な影響を与えることは確実で、それによるGDP(国内総生産)の落ち込みが2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災を上回ることは確実視されています。これが医療・社会保障の長期的な財源確保に重大な障害になることは確実です。 しかし、国民意識の変化という面では、非常時における医療の役割・重要性が広く理解されたことも見落とせません。 保健所と医療機関・医療者の献身的な活動と「医療崩壊」の危機が連日のように報じられたため、国民はコロナの危険と保健・医療の重要性、国民皆保険制度の大切さを「肌感覚」で実感するようになりました。 東日本大震災後に高まった国民の「社会連帯意識」は残念ながら長続きしませんでしたが、このような「肌感覚」は相当長く続くと思います。 そのため、コロナ問題が収束した後に、政府が緊縮財政に転換しても、従来の厳しい医療費抑制政策を復活・強化すること、少なくとも医療費(伸び率)の厳しい抑制目標を設定することは極めて困難になると予測します。 ーーむしろ新型コロナ対策での反省で、縮減傾向にあった医療提供体制計画が大きく見直されるだろうと予測していらっしゃいますね。 まず、今回のコロナ対策の第一線を担った保健所の機能強化が図られると思います。 保健所数は、1994年の848か所から2019年の472か所へとほぼ半減しています。しかし保健所がコロナ対応を迅速に進める上で重大な障害になったことは広く報じられています。 2025年時点での医療ニーズを推計し、医療機能ごとに必要病床数を定めた「地域医療構想」についても、見直しが図られると思います。 現在の構想の「2025年の医療機能別必要病床数」には感染症病床が含まれていませんが、それが加えられるのは確実です。感染症病床は2000年の2396床から2017年の1876床に減少していますが、新たな感染症の発生に備えて、病床数の大幅増加が図られると思います。 また、高度急性期・急性期病床の大幅削減の見直しが図られるでしょう。諸外国に比べて少ないICU(集中治療室)の大幅拡大は必須となります。 その関連で、病床削減の大きな柱とされてきた公立病院の統廃合計画も大幅な見直しがされると考えます。公立病院の統合による機能強化は今後も進められると思いますが、それとセットで計画されている病院の廃止・病床削減は相当見直されるはずです。 効率一辺倒で余裕のない地域医療構想のスタンスが見直され、様々な大災害にも迅速に対応する「医療安全保障」という視点から、各都道府県および全国で、ある程度余裕を持った病床計画が立てられるようになると思います。

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