いすゞ、米大手からエンジン調達 コスト削減で電動車集中
いすゞ自動車は主力のディーゼル型トラックのエンジンを外部調達する。一部車種について2021年中に米エンジン大手のカミンズから供給を受け始める。既存のエンジンの研究開発費を年間で数十億円ほど減らし、電動車など次世代車の開発に振り向ける。脱炭素への対応を迫られるなか、外部との協業で次世代事業の原資を捻出する動きが広がりそうだ。 トラックの性能を左右するエンジンは、通常は自社で開発・生産するケースが多い。いすゞがディーゼル型トラックで他社からエンジン供給を受けるのは初めてとみられる。 排気量や馬力が比較的大きい中型トラックの一部車種について、カミンズが開発したエンジンを搭載する。こうした車種は21年中に北米などで販売を始め、その後、日本など他の地域にも広げる。一方、いすゞは主力の小型トラック向けエンジンをカミンズに供給することを検討する。 カミンズはエンジン専業メーカーで、トラックや建機向けの大型エンジンに強みを持つ。同社といすゞは2019年に環境負荷の小さい次世代エンジンの開発で提携した。今回は既存領域であるディーゼルエンジンの開発・供給でも手を組む。 いすゞの20年3月期のトラックの世界販売台数は約29万台。カミンズからエンジン供給を受けるトラックはまず数%程度とみられるが、コスト削減効果を見極めた上で、調達の対象拡大も検討する。 世界的に脱炭素のうねりが広がる中、乗用車に比べて対応が遅れているトラックでも電動化は急務だ。いすゞは次世代領域について、大型トラックの燃料電池車(FCV)や自動運転などの研究・開発でスウェーデンのボルボやホンダと組んでいる。 ただ、こうした投資負担は重く、回収にも時間がかかる。いすゞの20年3月期の研究開発費は981億円と5年間で約1割増えた。次世代領域向けの投資を捻出するには、既存領域にかかる費用をカミンズとの協業で圧縮する必要があると判断した。