声優・浪川大輔、引っ込み思案だった子役時代 “人生の先輩”堀内賢雄との出会いに感謝
■アニメ『体操ザムライ』“師弟リレーインタビュー”第3回/荒垣城太郎役・浪川大輔
子役時代に海外ドラマの吹き替えで声優デビュー、アニメ『ルパン三世』シリーズでは2011年より石川五ェ門役を演じ、2020年も多くの作品に出演した浪川大輔。『ユーリ!!! on ICE』『ゾンビランドサガ』を手掛けたMAPPAが制作するオリジナルTVアニメーション最新作『体操ザムライ』では、主人公・荒垣城太郎を熱演した。 『体操ザムライ』で天草紀之コーチを演じる声優・堀内賢雄について「優しさの塊みたいな人」と明かした浪川。第3回の本記事では、自身の子役時代、そして役者としての“先輩”である堀内との絆を語った。
* * * * * * * ――城太郎といえば、かけがえのない一人娘・玲(CV. 本泉莉奈)の父親でもあります。玲はどのようなキャラクターですか? 浪川:玲ちゃんはいい子すぎる! あれは絶対将来“ダメンズ”を育てますね。あと「城太郎のために我慢しすぎじゃないかな」と思うぐらい、かわいそうに見えちゃうときもあって。城太郎の目線で見ると「本当、すみません」と思ってしまいます。でも、城太郎はちょっと表現が上手じゃないだけで、確実に玲ちゃんのことをすごく大切に思っている。8割の人は“ダメな父親”と思うかもしれませんが、何もしないお父さんよりはいいかな(笑)。 ――そんな父親でもある城太郎ですが、アニメでは練習をやりすぎて「オーバートレーニング症候群」になっていました。 浪川:「練習は嘘をつかない」は本当だと思うんです。やった分だけが自信になりますから。ただ、体操の競技にはセンスも必要だったり、エンタメ業界もお芝居を披露したときの美しさだったり、捉え方次第ですが、練習だけじゃできない部分がどうしてもあると思っていて。お芝居も行間を尊重したり、見えないものを演じたりする力が必要で、滑舌だけ練習する、セリフだけ練習する、タイミングだけ練習する……それだけだと伝わらないんです。 例えば歌でも、音程を絶対外さない、大きな声が出る、良い声が出るようボイストレーニングする、ではそれが必ずしも良い歌になるかと言われると、そうでもない気がします。ちょっと音が外れてもニュアンスが素敵だったり、何かがズレていても「こっちの方がいいな」と思わせることが、おそらくお芝居の“芸術点”であるように思います。ただ、城太郎がやっている体操競技の場合は、少しズレることも許されない。でも芸術性を求められるってがんじがらめの中で戦うものだと思うので、体操選手はとても大変だと思います。 ――浪川さんは子役時代からアフレコのお仕事をされていますが、当時はそういう“芸術点”を意識してやられていたのでしょうか? 浪川:僕は元々引っ込み思案で「お芝居が好き」とかは全くなく、子役上がりでたまたま今いるだけなんです。子役のときは本当に何も考えないでやっていました。「お仕事だからね」と言われて「どうしたらいいの?」と聞くと「いつも通りやりなさい」って感じでした。小学生のクラブ活動に近い感覚でした。 ――それから大人になって、仕事の意識は変わりましたか。 浪川:そりゃあもう(笑)。僕、30歳までサラリーマンをやっていましたから。大人になって仕事のありがたみが分かりました。サラリーマンと兼業していた頃は、仕事の調整をして現場に行くのですが、時間を間違えて1時間遅刻したことがあって。25、26歳の頃かな。まだ児童劇団にいたので、マネージャーというマネージャーもいなかったですし、現場に着いたときにプロデューサーにスライディングで土下座しました。でも、何も言ってくれなくて、当時そのプロデューサーの伸ばした脚が、“橋”に見えたんでしょうね。その下を土下座しながらくぐって謝りました。人は追い込まれると何をするかわかんないですね(笑)。