52歳三浦“カズ”が横浜FC本拠地開幕戦で初ベンチ入りも出番なく「悔しい」
開幕戦で一発退場になった守備陣の柱、田代真一が出場停止となった関係で、山形戦ではワールドカップ戦士の松井が最終ラインに入って見ている側を驚かせた。田代が復帰する次節以降は、ユーティリティーぶりを示した松井がリザーブへ戻り、攻撃陣の一人がベンチ外となる可能性も出てくる。 ただ、たとえ再びベンチ外になったとしても、カズの日常は何ひとつ変わらない。サッカーに対するストイックな姿勢を介して先発フル出場できるコンディションを常に整え、斉藤をはじめとする若手に背中を見せ続ける。50歳を超えても現役を続ける理由を、カズはこう語ったことがある。 「やればやるほど、もっともっとサッカーをやりたいと思う。トレーニングや実戦で自分自身が思うようなプレーができないと、もっと上手くなりたいとも思う。その意味では、サッカーに対する情熱はどんどん深まっていくというか、衰えることはないんじゃないかと思っている」 ヨルダン、ベトナム、ハイチ代表を含めて、世界の13ヵ国で20以上のチームを指揮。豊富な経験を誇るタヴァレス監督も、若手選手と同じメニューを消化するカズに畏敬の念を抱きながらも、メンバー選考のうえでは特別扱いをしないと明言している。 競争の結果として、昨シーズンはすべて途中出場で9試合、わずか59分のプレー時間に終わった。もちろん悔しさを募らせたが、天皇杯とJ1参入プレーオフを含めた公式戦45試合で、42回にわたってベンチ入りしてきた軌跡が、キングと呼ばれる男をポジティブにさせる。 「先発かどうかは監督が決めることですけど、常にベンチに入るコンディションまではもっていけた。自分自身を評価するとまではいきませんけど、ひとつの自信にはしていきたい」 11月24日の最終節まで、残り40試合を戦う長丁場のJ2戦線でも、まずは最初のベンチ入りを勝ち取った。あとは試合で使わせたいと、タヴァレス監督へアピールできるかどうか。個人としての目標を追いながらも、カズの視線は連敗スタートで21位に沈む横浜FCの現状へも向けられている。 「昨シーズンはセットプレーを含めて、悪い流れのなかでも失点しなかったからこそ上位へ行けた。自分たちのストロングポイントを、どのようにして勝ってきたのかをしっかり見直して、選手同士でも話をしながら立て直していきたい」 3位に入った昨シーズンの横浜FCは、実は一度も連敗を喫していない。13年ぶりのJ1昇格を目指す今シーズンで、いきなり訪れたピンチでチームの力になるために。山形戦から一夜明けた4日に行われる、J3のSC相模原との練習試合からカズの次なる戦いが始まる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)