ネット炎上。貴乃花親方の降格処分は白鵬の減給に比べバランスを欠く裁定か
それでも、被害者側の貴乃花親方が、暴力行為をその場にいて止めず事件のきっかけを作った白鵬よりも遥かに重い処分となったことに違和感を感じる「忠実義務違反」があったことは否定できないとはいえ、貴乃花親方側の弁明を考慮して、同じく減給処分まででよかったのではないか。そもそも加害者側の事件に関する処分と、貴乃花親方の理事としての責任を問う処分を“同じ土俵”で裁くことにも問題がある。 なぜここまで厳しい処分になったのか理解に苦しむ。 「懲戒解雇」「引退勧告」「降格」の3つの処分は、理事会が単独で決めることはできずに評議員会が最終決定するシステムになっている。協会とすれば、「決めたのは我々でなく外部の評議員会」とのスタンスをとりたかったのかもしれない。 前出の相撲ジャーナリストの荒井さんは、「多分に協会側の感情的なものが入ったのではないか。加えて評議員会の池坊保子議長がメディアを通じて貴乃花親方の一連の行動に否定的な意見を発信してきたことも影響を与えたと思う」と推測する。 もし協会の姿勢に反旗を翻している貴乃花親方に対する何らかの感情の加わった裁定であれば、なおさら「公益財団法人」である組織としてのガバナンスを問われることになるだろう。 今後、気になるのは、1月4日の評議員会で「降格処分」が正式に決定した後の貴乃花親方のアクションだ。 理事会で文書を配布したり、聴取に弁護士を同席させたりしていた一連の貴乃花親方の行動を見ると「地位保全」など、今回の処分に関して法的な訴えを行う可能性も捨てきれない。 もし法廷闘争に、この問題が持ち込まれることになれば、泥沼化は必至。前出の荒井さんも、「私は法廷闘争になることは、協会には当然のことだが、貴乃花親方にもメリットは何もないと思う。そうなると、この問題は泥沼化してしまう」と危惧する。 だが、貴乃花親方へのバランスに欠く厳罰は、協会が今なお“なあなあ”の“お仲間意識”で固まった旧態依然とした組織から脱却できていないことを露呈したように思える。相撲界が根絶できていない暴力問題の再発を防止するには、いっそのこと泥沼化することも必要なのかもしれない。