【小倉2歳S】完璧だったモントライゼ、120%の騎乗が光った武豊騎手とメイケイエール
モントライゼを徹底攻略した武豊騎手
小倉開催が4週間と短期だった影響か、今年は10頭と頭数がそろわなかった小倉2歳S。人気が割れやすく、難しいレースが多い要因のひとつに展開の読みにくさがある。 【新潟記念 2020直前予想】全ての鍵は〇〇にあり!!好走馬にはシンプルな共通点あり!(東大HC・SPAIA編集部編) 今年も前走逃げた馬が5頭。前半600m32秒9を記録しているフリードがハナに立つのは明白だったものの残り4頭の出方が難しい。控えても味がない馬もいるかもしれない2歳の短距離戦だけに、そこをどう評価するかがポイントとなる。まして、舞台は4週間とはいえ最終週の小倉。加えて特別警報クラスの台風10号が接近、午後から天候は崩れ、馬場状態は重発表、外差しが目立つ状態だった。 レースは凡、その予想通りフリードが外枠からハナに行き、前半600m33秒9。番手にとりついたモントライゼが深追いせず、インのリサコーハクは追走に余裕がない様子。競り合いが生じなかったことでハイペースではあるものの、前に厳しい展開にはならなかった。 勝ったメイケイエールほか道中で行きたがる素振りを見せる馬が多く、一旦控えたアールラプチャーが抑えきれずモントライゼに並びかける。この動きに乗じて、馬を刺激しないように動いたのが後方寄りにいたメイケイエールだった。アールラプチャーの真後ろに進路をとり、同馬を盾に行き過ぎないように進出、モントライゼのさらに外に出し、併されないように出し抜く形で捕らえた。スタートから道中の仕掛け、進路どりまでこれぞ武豊騎手といった騎乗だった。 2着モントライゼは抜け出すタイミングもコース取りも完璧だった。相手に120%の騎乗をされたに過ぎず、この一戦で評価は落とせない。最後にメイケイエールに併せていれば、さらに際どかった可能性はある。3着以下は大きく離されており、上位2頭との能力差が際立った結果となった。
夢の白馬の一族対決へ
勝ったメイケイエールの母はシロインジャ―、その母はユキチャン、祖母はシラユキヒメで前日の札幌2歳Sを勝ったソダシと同じ白馬の一族。ブチコとユキチャンは異父姉妹の間柄。この一族は切れ味より持続力、芝よりダートという馬が多かったが、この世代から芝の重賞勝ち馬を続けて2頭出した。 ハイペースの札幌2歳S、重馬場の1200mの小倉2歳S。なるほど、この血統が持つ良さを発揮できる舞台だったことは確かだろう。ゆったりした流れで走れるかどうかは微妙ながら、どちらも牝馬なのでこの先は当面はマイル戦が目標。昨今のマイル戦はスローペースもあるが、問われるのはスピードと持続力。白馬の一族にとって武器を最大限いかせる舞台でもある。 メイケイエールは折り合いの難しさという課題は残るものの、父ミッキーアイルは3歳時にマイル重賞を連勝し、GINHKマイルCを勝った。マイルをこなす素養は十分ある。今年は注目を集める新種牡馬が多いが、重賞ウイナーを最初に出したのはミッキーアイルだった。 意外な印象もあるが、同馬は2歳時に2勝、3歳春に重賞3連勝とドゥラメンテやモーリスにはない早い時期から走った戦績がある。納得といえば納得である。メイケイエールは父ミッキーアイルの影響をかなり強く受け、毛色は父と同じ鹿毛。白馬の一族としては異色な存在ではあるが、血統的に同族であることから今後はソダシとの同族対決に脚光が集まるだろう。 今年の暮れから来春にかけて無事に走り、そしてどちらもライバルとなるような活躍をしてもらいたいものだ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
勝木淳