優勝の巨人か60本塁打のバレか MVPの行方は?
3冠王でMVPを逃した落合とバース
「その年、最も活躍した選手」という優秀選手の定義についての議論が、再びヒートアップしたのが1986年だ。優勝はセは広島、パは西武だったが、ランディ・バース(阪神)、落合博満(ロッテ)が、3冠王を獲得していたのである。しかし、3冠の2人は、選出されず、優勝したカープから北別府学、西武から石毛宏典が、それぞれ選ばれ、どういう基準でMVPを選ぶのかという議論が高まった。 ちなみに優勝チーム以外からMVPが選出された例は、2リーグ制後、セで2度、パで10度。BクラスのチームからのMVPは1982年の落合(ロッテ)、1988年の門田博光(南海)、2008年の岩隈久志(楽天)の3度しかない。
西日本ではバレンティンを推す声も
ではバレンティンの記録は、どう評価されるのか? 関西、中部圏の記者たちをリサーチするとバレンティンを押す声が多かった。 「長年破られなかった本塁打記録を破った価値がある」 「優勝した巨人に適した人がいない」 確かに、優勝した巨人のMVP候補は、複数いて、誰が見ても意見一致するような絶対的本命がいない。村田修一が後半、数字を残したが、前半戦は低迷してタイトルとは無縁。優勝へ牽引したリーダーの一人、阿部慎之介も、本塁打(32)、打点(91)というふたつの部門では、チームでナンバーワンだが、打率は3割に乗らず、故障もあってフル出場はできていない。
関東では巨人勢が有力
投手陣では、勝ち頭が内海哲也と菅野智之の13勝では弱い。抑えの西村健太朗が球団新記録となる42セーブ記録を作ったが、山口鉄也も、6年連続60試合登板という大記録を作っていて、どちらも候補といえば候補。こうなると、3人連記の投票では、巨人の票はバラけるだろう。だが、バレンティンだけは3位以内に必ず入ると予想される。消去法的にバレンティンのMVPの可能性が高まるわけである。 ただ関東の記者の間では、巨人勢を推す声も目立つ。 あるベテラン記者は「若い頃、飲みの席で先輩記者から『MVPは優勝したチームから選ぶべき』と、教えられたことがある。野球は個人競技ではなく、モチベーションはチームの優勝にあるのだから、MVPは優勝チームから選びたいね。それにバレンティンも日本記録にプラスして3冠王なら有力だったけれど、結局、1冠。記録だけで、今シーズン最も価値のあるプレーヤーだったと言えるかどうか。野球はホームラン競争じゃなく、勝敗を争うもの」という辛らつな意見を口にした。