【世界に挑む日本人ライダーの足跡】Moto3鈴木竜生選手、意識が変わった10歳の大怪我。「嫌い」が「好き」になったとき
「ステップアップしていって、目標であるGPに行くための最善策は何だろう、と家族と話し合いました。やるなら、まだ誰もやっていないこと、いきなりヨーロッパに行って、レベルの高いところで揉まれてみよう、と」 「日本人であるがゆえに、言語の壁や、異文化とのギャップもあります。それを若いころから肌で感じるというのも目的のひとつだったので、すぐにヨーロッパに行きました。最初はフランスのチームだったので、フランスに住んで、フランスのインターナショナルスクールに通っていました。スペイン選手権(CEV)を走って、その後、Moto3にデビューしたんです」 現在はMotoGPパドックで主に話されている英語ばかりか、鈴木選手は長くイタリアのチームに所属していたことからイタリア語も堪能です。むしろ、イタリア語の方が得意だとか。取材に行くと、鈴木選手がイタリア語でチームスタッフなどと会話していたり、じゃれたりしている様子をよく見かけます。 そして、そういう他愛のないことが大事なコミュニケーションなのだとも感じとれるのですが……。ついつい、きっと大きな苦労があったのだろうと思って「言葉に苦労したところもあると思うんですが」と聞くと、「みんなに言われるんですけど、そんなに……」と、当の本人は首をひねるのです。 「そんなにすごく勉強したわけでもないんですよ。周りのみんながその言葉しか話さない、という状況に追い込まれれば、人間って意外とできるものですよね」と、困ったように苦笑いしながら。
「もし、レーシングライダーになっていなかったら?」
最後に、「もし、レーシングライダーになっていなかったら、どんな職業に就いていたと思いますか? あるいは、就きたかったですか?」という質問をしました。この企画では、全てのライダーに、最後に同じ質問をしています。
「もし普通に働いていたとしても、趣味でスポーツは絶対にやっていましたね。それは100パーセント、断言できます」 鈴木選手は動いていないと「そわそわしちゃう」のだとか。 「体を動かすのが好きというか、体を動かしていないと不安なんですよ。例えば休日で、トレーニングなどをしなくてもいい日だとします。朝起きて、ゆっくり朝ごはんを食べて、家事をして、お昼ごはんを食べて、ソファでゆっくりしていると……何をしたらいいのかわからないんです」 「映画を見たり、リビングでくつろいでいる時間がもったいない気がしてしまうんです。どうせ何もしないなら、1時間くらいランニングしに行こうかなって思っちゃう。だから、何かしらスポーツをやっていたと思います」 「あまりボールを使ったスポーツは好きじゃないです。自転車などはトレーニングでやっていて、好きな部類に入りますね。あとは、ランニングもずいぶん好きになってきました」 ヨーロッパの地に飛び込んでから、11年。鈴木選手は、世界の舞台で戦い続けています。