ゴボウと張り合って15万いいね!日常をバラエティー番組風に切り取るバズメイカー「#本日の地味なハイライト」とは?
「#本日の地味なハイライト」という企画がTwitterで人気だ。何の変哲もない日常生活の一幕にテロップやワイプをつけることで、まるで実在するバラエティ番組かのように見せる。絶妙な着眼点の面白さが癖になるこの企画を投稿しているのは、編集者・ライターとして活動するうないいちどう氏。Twitterフォロワーは30万人超、投稿のたびに数万いいねを集める人気コンテンツを思いついたきっかけや、2016年から6年間にもわたって平日毎日投稿し続ける継続のコツ、過去最もバズった投稿などの話を聞いた。 【画像】過去最もバズった投稿は、15万いいね獲得の「ゴボウとの張り合い」 ■継続の秘訣は「未練がましさ」 ――「本日の地味なハイライト」を始めたきっかけを教えてください。 「今日はエアコンの温度を上げた以外に思い出せることがないな」と思った夜があったんです。一日なにもしないまま日が暮れてしまって。その再現VTR風の画像を作って投稿したのが始まりです。続ける予定はなかったんですけど、仕事仲間から「アレいいじゃん」と反応があったので、次の日も投稿して、また次の日も。 当時はフリーライターとして活動していて、えらい貧乏だったので、自己アピールのために「Twitterでなにか定期的にコンテンツを発信しよう」と考えていたんです。そんなときに、たまたま「本日の地味なハイライト」を投稿して、仲間もいいと言ってくれてるし、これでいこうかなと。軽い気持ちで始めました。 ――2016年1月から始められたとのことですが、6年もの長期間、平日毎日の投稿を続けられている秘訣は何ですか? 6年は長いですが、3カ月とか半年続けるのはそんなに難しくないと思っているので、まずは短い期間、気合で続けること。身も蓋もないのですが、最初は根性論です。1週間、10日、2週間、半月、20日と、切りのいいタイミングが訪れるたびに、それを口実にやめようとしますが、気合で乗り越えます。 なにか小規模なことを始めると、しばらくの間は「いつやめてもいい」という気持ちが残っていると思うんですよね。でも続けていくうちに、「やめると、なんか気持ち悪いな」に変わる瞬間がやってきます。執着心の芽生えです。執着心があると、やめるときにダメージが伴うじゃないですか。継続って言葉にはポジティブなイメージがありますけど、僕にとってはダメージの回避です。痛いのが嫌だから続けるみたいな。 長く続ける秘訣は「未練がましさ」かもしれません。僕の場合は、ありがたいことに応援してくれるファンが居続けてくれたので、より未練がましくなれました。 ――どの投稿も非常に拡散されていますが、いつ頃から注目され始めたと感じますか?きっかけが何かあれば教えてください。 2021年の5月に行われたTwitterのアップデートがきっかけだと思います。それまでのTwitterは、縦長の画像を投稿すると、タップしないと画像全体が確認できない仕様でした。それがサムネイルで全体が表示されるように変わって、そこから如実に反響が大きくなっていきました。たくさんの人に見られるようになってからは、文字の大きさを見直したりワイプのコメントのパターンを増やしたりしたので、それも少しは影響しているかもしれません。でも、ほとんど運の力ですね。 ■「行動」より「思考」を切り取る方が幅が広がる ――平日毎日投稿となるとネタ出しも大変だと思うのですが、日々どのように投稿内容を考えていますか? 再現VTRなので、創作ができないんですよね。だからワイプの表情や吹き出し、テロップでどう表現すると面白くなるかを毎回考えています。日々の生活のなかで「どこを切り取るか」を常に頭の片隅に入れておき、「ここ使えるな」という瞬間がきたら、なるべくその場ですぐ撮影して。仕事中でそれどころじゃない場合は一旦メモしておいて、落ち着いてから撮ります。カメラを三脚につけた状態で部屋の隅に置いておいて、すぐ撮れるようにしていますね。 ――続けていく中で、画像の作り方や撮影方法など、最初の頃よりブラッシュアップされた点があれば教えてください。 昔は「行動」を切り取ってテロップを当てることが多かったんですけど、最近はほとんど「思考」を切り取っています。頭の中で考えている言葉を、明朝体のテロップにして。リンゴをかじったというような「行動」よりも、ダジャレを思いついたみたいな「思考」を見せたほうが、投稿のバリエーションを増やせることに気づいたんです。それが最大のブラッシュアップかもしれません。毎日だいたい同じ場所で同じような行動をしているので、行動主体だとすぐネタ切れになっちゃうんですよね。 ――過去の気に入っている投稿、特に反響の大きかった投稿を教えてください。 気に入っているのは「おてもと」の読み間違い。いちばん反響が大きかったのはゴボウとの張り合いで、2万リツイート、15万いいねぐらいです。最近は月間のインプレッション(Twitterのタイムラインに投稿が表示された回数)が1億を超えることもあって、当初と比べると状況が一変しましたね。 ■「バラエティ番組っぽさ」の秘訣は「ワイプの中の笑顔」 ――どの投稿も絶妙に「バラエティ番組っぽい」と感じるのですが、「バラエティ番組っぽさ」に大事だと思われる要素は何ですか? 「ワイプの中で人が笑っていること」だと思います。ワイプ自体はバラエティに限らず情報番組などでも表示されていたりしますよね。番組の内容がマジメだとワイプの中の人の表情もマジメになりますが、バラエティの場合は笑顔が多い。ここが「バラエティ番組っぽさ」を演出する一番のポイントです。 ――「本日の地味なハイライト」という番組や、ワイプの方々の設定があれば教えてください。 番組の設定は「うないいちどうに密着したVTRを、スタジオの出演者たちが観ている」こと以外は特に決まっていません。この番組の主旨は何なんだろうと、自分でもわからなくなることがあるくらいで。人の生活をのぞき見るような番組なので、恋愛リアリティーショーに近いかもしれません。自分以外だれも入居してこない、孤独な「テラスハウス」みたいな感じです。寂しいですね。 ワイプの中の人たちは変装した自分なのですが、きっちりとした設定はないです。いつも左にいる帽子をかぶったおじさんは、ワイプで抜かれることが多いので、番組サイドに気に入られていますね。 ■好きなバラエティは「水ダウ」 ――うないさんの好きなバラエティ番組は何ですか?またどんなところが好きですか? いま放送されている番組の中だと「水曜日のダウンタウン」が好きです。「ごっつ」をリアルタイムで観ていた世代なので単純にダウンタウンが好きだからというのもありますが、企画が面白いです。おぼん・こぼんの仲直りシリーズは「テレビってやっぱりスゴいな」と久しぶりに震えました。企画はコンテンツの命なので、いい企画を生み出す番組には頭が下がります。 あとはもう放送終了してしまいましたが、「伯山カレンの反省だ!!」も、二人の掛け合いが好きでよく観ていました。いちばん復活してほしい番組は「WORLD DOWNTOWN」です。ダウンタウンが外国のスタジオで、外国人のMCやコメンテーターに雑に扱われるという番組設定が斬新で面白くて。めちゃくちゃ笑いましたね。 ――今後やってみたいことがあれば教えてください。 「本日の地味なハイライト」に関して言えば、デザインなどディテールで「テレビっぽさ」の足りない部分があるので、これからも改善を繰り返していきたいです。今までは「ぜんぶ一人でやる」をモットーにしていましたが、今後はプロのデザイナーに番組ロゴやテロップのリニューアルをお願いするとか「より質のいいものを作る」方向に転換したいなとも思っています。実際、テレビ番組のデザインはプロがやっているので、僕もそうするべきだよなと。 それと並行して、テレビ番組から着想を得た他のアイデアもあるので、しっかり形にしていきたいです。できそうなことから手をつけていって、人に面白がってもらえそうなものができたら追求して。そういう活動をしていけるといいなと思っています。