“ゆっくり茶番劇”問題は「ちょっと攻撃的だったと思う」“ボンドガール”を商標登録したプロデューサー高橋信之氏
シューティングゲームを中心とした作品群『東方Project』の2次創作コンテンツ“ゆっくり動画”。先週、権利者などではない動画投稿者がジャンルの総称ともいうべき「ゆっくり茶番劇」の商標権を登録したことを公表した問題。 【映像】高橋氏に聞く「ボンドガール」登録申請の経緯 商標権とは、商品やサービスに名称やマークを使用する際の「独占排他権」で、動画投稿者は商用利用に対し年間10万円の使用料を求めるとツイート。一方、ネット上では二次創作を楽しめなくなってしまうと懸念の声が上がっていた。
批判の高まりを受け、代理申請をした特許事務所は「皆様に愛されている商標であることを存じておらず、ご迷惑をおかけ致したこと申し訳ございませんでした」と謝罪。動画投稿者も、権利は保持しつつも、使用料については請求しないことを明言した。 特許庁も啓発コンテンツを制作するなど、その認知を高めるべく取り組んでいる商標権の制度。
しかし現状のような“早い者勝ち”の“先願主義”について、ネット上のトラブルにも詳しい深澤諭史弁護士は「法的には当事者で決めるのが原則で、国としても基本的には一定の拒絶理由が見当たらなければ出願を認め、あとは当事者間で争えばいいということだ」と話す。 それでも今回のケースのように、第三者が先駆けて出願・登録してしまった場合、このようなことが今後も起きる可能性は否定できない。
「当然の成り行きというか。僕は皆が手をつけていないものを拾ったわけだが、皆が手を付けて楽しんでいるものをいきなり握って“自分のもんだ”と言うのは、ちょっと攻撃的だったと思う」。 そう話すのは、あの『007』シリーズでジェームズ・ボンドの敵役などとして登場する「ボンドガール」の商標権を取得した高橋信之氏(スタジオ・ハードデラックス代表)だ。「ゆっくり茶番劇」同様、権利者やファンからの反発が予想される出願だが、いったいどのような経緯だったのだろうか。
「MI6=イギリス情報局秘密情報部の東京支部にいる日本のボンドガールが主人公で、イギリスのジェームズ・ボンドと協力するという“ジェネリック”な漫画、映画に作りたかった。画を持ち込んだ際には“権利はあるのか”と聞かれるものなので、商標は取ってある、と言えば一定の効果はある。医薬品もそうだが、著作権というのは50年や70年で切れるものなので、以後は自由にみんな使えるという文化があるので、その継承という意味では、みんなに門戸が開かれるという意味もあるのかなと考えている。 実際、映画の原作になった小説の著者、イアン・フレミングさんの著作権も切れていたし、アメリカでもボンドガールという商標の権利は放棄されていた。加えてボンドガールというタイトルは、映画評論家の水野晴郎さんがユナイト映画社の宣伝担当だった時に作った、日本国内でしか通用していないものだった。 そこで誰も使っていないのであれば、ぜひ自分で企画を作りたいと考え、商標を申請したら取れた。もちろん“本家”からダメだと言われたり、特許庁に指摘を受けたりすればお返しするつもりでトライした。一度はダメだというクレームがアメリカから来たものの、特許庁に認めて頂いて、2016年に登録できた」。 しかし高橋氏の目論見は外れ、アメリカからは権利を返してほしいとの要請が寄せられる。