実は30歳以上男性の約6割がアウトな「高血圧」の恐怖
毎日、血圧を測っている人は少ないだろう。だから自分が高血圧だったとしてもわからないはず。しかし、高血圧は"突然死"のリスクを高めるのだ。そこで最新知識と予防法を専門医に聞いた! 【図解】血圧のメカニズム ■トイレを我慢すると血圧が50上がる!? これから冬にかけて怖いのは新型コロナだけではない。 "突然死"に至ることもある急性心筋梗塞(こうそく)の死亡者数は、夏よりも冬のほうが約2倍も多い(厚生労働省「2017年人口動態調査」)。その要因のひとつに血圧の急上昇がある。 暖かい部屋から寒い外に出るときなど、寒さで血管が収縮して血圧が上がる。そのとき高血圧の人だと、突然死のリスクがさらに高くなるのだ。 実は30歳以上の男性の約6割は高血圧だ(厚生労働省「2017年国民健康・栄養調査」)。知らない間に突然死のリスクが高まっていてもおかしくないのである。 そこで「そもそも高血圧とは?」「高血圧はどうすれば予防できるのか?」などを"ミスター血圧"と呼ばれ、『血圧を下げる最強の方法』(アスコム)などの著書がある元東京女子医科大学東医療センター内科教授の渡辺尚彦(よしひこ)医学博士に聞いた。 ――そもそも血圧って何? 渡辺 動脈内を流れている「血液の圧力」を略して「血圧」と言っています。ちなみに静脈のほうは静脈圧です。 心臓は体中に血液を送るポンプの役目をしていて、心臓がしぼむと血液がドバーッと大動脈に出ます。逆に広がるときは心臓の弁が閉じて、血液の放出が止まります。 血液がドバーッと出ているときは大動脈に強い圧力がかかります。これは「収縮期血圧」といって、いわゆる"上の血圧"と呼ばれるものです。一方、血液の放出が止まっているときが「拡張期血圧」で、いわゆる"下の血圧"です。
――「血圧が高い」という状態とは? 渡辺 世界的な基準は、上が140(㎜Hg)で下が90(㎜Hg)。上でも下でも、どちらか一方が、これ以上の数値だったら高血圧と呼びましょうと決まっています。ただ、一度数値が上回っていただけで高血圧というのではなく、病院などで複数回測定したときに高かった場合にそう呼びます。 ――それはなぜ? 渡辺 血圧は一定しているわけではなくて、一日のうちでも絶えず上下しているからです。例えば、寝ているときは血圧も脈拍も低く、朝、起きると血圧も脈拍も高くなる。 ですから、家で血圧を測るとき(家庭血圧)には決まりがあって、「朝起きてトイレに行った後に測りましょう」ということになっています。なぜなら、トイレを我慢していると血圧が上がります。 私がトイレを我慢しているときに血圧を測ったら上が175ありました。そして、用を足した後は125まで下がりました。50も違ったのです。ですから朝起きて歯を磨いたり、ご飯を食べたりする前に、排尿後1~2分ほど安静にしてから測るというのが基本です。 ちなみに、家庭血圧の基準値は「上が135で下が85以上」と、少し下がります。これは家だとリラックスできるからです。医療機関で測ると、緊張するためか血圧が高くなる人が多いのです。ですから、できるだけ自分の家で血圧を測ってほしいです。 ――看護師さんが美人だと普段より血圧が上がりますよね。 渡辺 そういうのももちろんあります(笑)。家で血圧を測ると低く、医療機関で測ると高くなる場合を「白衣高血圧」と呼んでいます。 ――血圧って、どれくらい高いと危険なんですか? 200あったら相当ヤバい? 渡辺 200がずっと続けば危険ですが、日常生活でも200になることはあります。例えばトイレで排便をしているときに血圧を測ってみてください。スポーツクラブで走っている最中も200を超える場合があります。 これが短時間ならいいけれど、長時間200が続くとあまりよくありません。ウエートリフティングをやっている人が、普段は上が120程度なのに、持ち上げたときに480に上がっていたという報告がありました。血管がもろければ破れていたかもしれません。ですから、血圧の高い人は重い荷物を持ち歩かないほうがいいのです。