北米モデルの280Z仕様なのに、あえて国内仕様のテールレンズを採用した理由とは?|1976年式 日産 フェアレディZ-T S31 280Z仕様 Vol.3
1976年式 日産 フェアレディZ-T S31 280Z仕様 Vol.3 S31フェアレディZでをベースに、北米仕様のダットサン280Zを造り上げたオーナー。だがその苦労は並大抵ではなかった。 単に北米仕様のパーツを揃えて交換するだけではすまなかった。例えば北米仕様を象徴する大型の5マイルバンパーを装着するためには、ボディ側のリブを加工してやらないと装着できないなど、ボルトオンで交換がきかない箇所が多数あったのだ。 パーツ取りの左ハンドル280Zが付けていたナンバープレートや280Z用ホイールカバー、アメリカ東海外仕様のコーションラベルなど【写真8枚】 結局、ボディ側のパーツ全部をばらして、パネルから造り直すほどの手間がかかった。だが、オーナーは心折れることなく、外から見えない部分にまで手を加えていった。 5マイルバンパーを装着したその姿は北米仕様のダットサン280Zそのものだが、右ハンドルにこだわったおかげで、いろいろな問題も浮上してきた。 苦労したのは左ハンドルに存在しない右側ドアミラー。当時の年式では、ドライバー側にドアミラーが付いているだけだったので、現地で購入したクルマにも右側ドアミラーがなかったのだ。 そこで、国内の友人に頼んで、ワンオフで造ってしまった。左側ミラーから型をとり、左右を反転させて作成。ミラー部は新規作成し、内部機構は軽自動車のカプチーノからパーツを流用している。 さらに、内外装だけでなく、エンジンも北米280Zに準じてL28型 2.8Lエンジンに換装。一見素ノーマルだが、実はノーマルスペックのまま、レーシングエンジンを造るのと同じ工程で、ポート研磨までして完成させたシロモノ。 本来、国内仕様ではヘッドカバー奥のサージタンク左側にEGRユニットが付くが、北米仕様では存在しないため、その部分も忠実に再現。ファンの羽根も1枚多い8枚の北米仕様タイプへ交換するというこだわりようだ。 オーナーのこだわりはまだまだ続く。ホイールカバーは280Z用で、ホイールナット位置を合わせて装着すると、スチールホイールのバルブ位置が国内仕様と違っている。 マフラーカッターは北米のディーラーで注文して手に入れたが、タイコ回りに見える遮熱プレートが出てこなかったので、中古パーツを送ってもらい、磨き上げて装着している。 さらに、パーツ取りのクルマが東海岸仕様だったので、コーションラベルも合わせて「NON CATALYST」の文字が印刷された東海岸仕様とするなど、徹底している。 だが、内外装ここまで北米仕様にこだわり抜いているのに、テールレンズは国内仕様だ。部品の手配ができなかったのか、それとも交換が難しく断念したのか……。答えはそのどちらでもない。あえて国内仕様のオレンジレンズを選んでいるのだ。 それは、当時、北米の若者たちの間ではやったカスタムに習っているから。日本にルーツを持つ、Zは、北米の若者の間でも人気を博したが、彼の地では、いわゆる「本国仕様」へのあこがれがあり、テールレンズなどを日本仕様(JDM)にするスタイルが流行ったのだ。そこで、オーナーはそんなカーカルチャーへのノスタルジーとリスペクトを込め、あえてテールレンズには国内仕様を採用している。 北米仕様のフルノーマルというだけでは面白くないと、当時のリアルな北米スタイルをそのまま再現しているとはさらに驚かされる。 複数台のZを所有し、長年Zを楽しんできたオーナーだからこその「遊び心」が反映されたダットサン280Z仕様のS31。こんなフェアレディZは、おそらくほかにない。
Nosweb 編集部