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[寄稿]菅新政権の課題

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ハンギョレ新聞

 8月末に突如安倍晋三首相が退陣を表明し、菅義偉氏が後継首相に選ばれた。政治家の家系の嫡子であった安倍氏と違い、菅氏は秋田県の農家の生まれで、地方議員からたたき上げたという経歴のゆえか、国民には好感を持って受け入れられている。就任直後の各紙の世論調査における支持率は、60から70%である。  安倍氏の自民党総裁としての任期は来年9月までで、今年の春ごろから安倍内閣支持率が低下する中で、次の首相はだれがなるかという話題が政治報道で注目されるようになった。今年6月に朝日新聞が行った世論調査では、次の首相として望ましいのは、石破茂元自民党幹事長31%、岸田文雄自民党政調会長4%、小泉進次郎環境大臣15%、菅義偉官房長官3%(肩書は当時)と、菅氏に期待する人はほとんどいなかった。しかし、安倍首相が退陣を表明した直後、自民党の二階俊博幹事長や麻生太郎副総理が菅氏を後継に据えるという流れを作り出し、ほとんどの派閥がこれに同調した。二階、麻生両氏のねらいは、安倍路線を継承させた新体制の中で、自分たちの影響力を維持したいということだったと思われる。そして、他の派閥は勝ち馬に乗りたいという利害だけで行動した。  自民党の中でこうした動きができると、世論も変化した。自民党総裁選挙の直前の9月3日に朝日新聞が行った調査では、菅38%、石破25%、岸田5%と、菅氏の支持は急上昇した。自民党のボスの談合で菅政権誕生という流れが固まったことを受けて、一般国民も菅氏を支持するようになった。日本には、寄らば大樹の陰という言葉がある。強い者に従属する、頼ることが身のためという意味である。このような態度は民主主義とは相容れないのだが、日本ではそのような受動的な気分が依然として残っている。  菅政権はまだ具体的な政策を提案しているわけではない。しかし、官房長官時代の言動や行動からは、いくつかの懸念が浮かび上がる。菅氏は官房長官として毎日記者会見を行っていた。東京新聞の女性記者が政府の不祥事などについて追及を続けると、「あなたに答える必要はありません」と、答弁を拒否したことがある。これについて、米紙ニューヨーク・タイムズは「日本は憲法で報道の自由が記された現代的民主国家だ。それでも日本政府はときに独裁政権をほうふつとさせる振る舞いをしている」と批判したことがある(2019年7月5日)。 この記者だけではなく、都合の悪い質問に対しては「批判は当たらない」、「問題ない」といった根拠のない断定を繰り返すのが菅話法の特徴である。大学の口述試験で、理由もなしに自分の主張を繰り返す学生は不合格となる。自分の主張の根拠、理由を相手にわかるよう説明することは、あらゆる議論のルールである。その意味で、菅氏は民主主義的な討論を破壊していると言わなければならない。 また、菅氏は官房長官として行政府における高級官僚の人事を動かした。地方自治を担当するある優れた官僚が菅氏が推進している政策について、公平、公正の観点から問題があると疑問を呈したところ、菅氏に逆恨みされ、事務次官候補から閑職に左遷された。その官僚は、朝日新聞のインタビューに答えて、次のように述べている。 「いまの霞が関(中央官庁)はすっかり萎縮しています。官邸が進めようとする政策の問題点を指摘すれば、『官邸からにらまれる』『人事で飛ばされる』と多くの役人は恐怖を感じている。どの省庁も、政策の問題点や課題を官邸に上げようとしなくなっています」(9月12日)  政治家が政策を主導することは民主主義にとって必要である。しかし、十分な議論もなしに私的な感情で人事を動かすなら、それは独裁である。農村出身の苦労人という経歴は、菅氏の政治家としての能力、資質を判断する材料とは無縁である。10月に召集される臨時国会において、菅首相の適格性について議論を深めてほしい。 山口二郎・法政大学法学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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