「男らしさ」の呪縛 大黒柱や仕事第一…刷り込み重荷 19日「国際男性デー」
11月19日の「国際男性デー」をご存じですか。男性の健康に目を向け、性の平等を目指す日として世界で広がりつつある。「女であること」に縛られない生き方を求める女性が増える一方で、男性ならではの「生きづらさ」はあまり可視化されてこなかった。職場や学校、家庭で「男だから」という呪縛とプレッシャーに悩む人たちの声を、無料通信アプリLINE(ライン)で聞いた。 【グラフィック】「男らしさ」への声 「男なんだから良い大学を出ときなさい」。広島市安佐北区の男子高校生(17)は、進路選択で親と祖母から言われる一言が引っかかる。「大黒柱として一家を養うにはある程度の収入がいるし、頭が良くないといけん」というのが理由らしい。でも「女性も活躍する時代に『養う』なんて古い。家事育児も夫婦で分担するものだと思うのですが…」と首をかしげる。
▽校則「男子は清潔で短い髪型」に違和感
学校でも違和感を覚える。例えば校則。「男子は清潔で短い髪形」と決められている。教師に疑問をぶつけても「短髪が当たり前。受験や就職に影響しないため」としか答えない。「ショートカットの女子はいるのに、なぜ男子は好きな髪形が許されないんだろう」と釈然としない。 生物学的な性差とは別に「男らしさ・女らしさ」という考えは社会が作り出す性差だ。無意識な「刷り込み」や「押し付け」はあちこちで存在する。 西区の女性(48)が経営する学習塾では、「男の子だから算数・数学ができないといけない」という意見を口にする保護者が一定数いる。そんなとき、女性はやんわり「性別に関係なく勉強ができたら楽しいですよ」と伝えるが、「男の子は理系」というイメージは根強い。安佐北区の母親(38)も普段は男女関係なく子育てをしているつもりだが、5歳の息子にはつい「男の子なんだから泣かない!」と言ってしまう。
▽「転勤当たり前」働き方に窮屈さ
働き方に窮屈さを感じる人も多い。「男は正社員で働け、という重圧がつらい」と寄せたのは安芸区の40代の介護職男性。就職氷河期世代で、工場で派遣社員をしていた。非正規への偏見が怖くて、友人たちには内緒にしてきたという。 東区の国家公務員男性(57)の職場では「男は転勤が当たり前」で、不自由や不都合を被っても文句が言いにくい。国の政策を受けて「仕事と家庭の両立」を唱えるが、それは女性に限ったこと。妻が公務員で夫が民間勤務の場合は転勤を免れるが、逆なら単身赴任か妻が退職するしかない。転勤を拒否すれば昇進できない。 男性の育休も表向きは反対されないが、裏では「あいつは何を考えてるんだ」と陰口を言われる。「『男は仕事ファースト』の縛りが、男女ともに生きづらい世の中にしているんじゃないか」と問い掛けた。