「ニューヨークの女王」から「WNBAの顔」へ、躍進するサブリナ・イオネスク
「クイーン・オブ・ニューヨーク」 こう呼ばれるのは、WNBAのニューヨーク・リバティに所属するサブリナ・イオネスクだ。2020年にドラフト全体1位で指名された26歳は、WNBA史上初となる単一シーズンでの500点、200リバウンド、200アシスト達成など、キャリア5年目ながらすでに歴史に名を刻んでいる。2021年にはアメリカのバスケ雑誌「SLAM」の表紙を飾り、毎年ユニフォームの売り上げでも上位に入るなど、WNBAを代表するスーパースターだ。
オールラウンダーとして名を馳せた大学時代
イオネスクのそのスター性は、学生時代から際立っていた。119勝9敗と圧倒的な戦績を残し、全米最高峰のプレイヤーと評されたミラモンタ高校時代を経て、大学はオレゴン大に入学。そこでもNCAA史上初のキャリア通算2000点、1000リバウンド、1000アシスト超えをクリアし、男女通じて歴代1位という26回のトリプルダブルを記録するなど、歴代屈指のオールラウンダーとしてその名を轟かせた。 その人気も圧倒的で、入学前は平均観客数が1500人程度だったオレゴン大のホームゲームは、イオネスクが在籍した4年間で平均1万人と大幅に増加。敵地でもそのプレイを一目見ようと会場に足を運ぶ人が多くなり、女子バスケットボール人気を促進した選手としても称されている。
苦難を乗り越え、視界に捉える球団初優勝
カレッジ最高の選手として、卒業後は期待通りドラフトトップ指名を受けたイオネスクは、当時2年連続で最下位を争っていたリバティの救世主として大きな注目を集めた。しかし、WNBA入り後は、その大きな期待に応えられない厳しいシーズンが続く。ルーキーイヤーは3試合目で、重度の足首の捻挫を負いその後のシーズンを全休。手術を経て復帰した2年目も、平均11.7点、FG成功率37.5%、3ポイント成功率32.9%と、前評判ほどのインパクトを残せずにいた。 「復帰を急ぎすぎた」と怪我が完全に癒えていない状態でプレイしていたことを後に告白したイオネスクだったが、ある選手の助言がブレイクの転機となる。それまで痛みを隠していたイオネスクは、2度のMVP受賞を誇るシカゴ・スカイのキャンデス・パーカーから「しっかり怪我を治しなさい。そうすれば本来の力を発揮できる」と試合中にアドバイスを受けると、「自分を理解してくれる人がいる」とプレッシャーから解放されたのだった。 その後のイオネスクの活躍は目覚ましい。万全の状態で迎えた3年目は自身初のオールスター出場を果たし、直近2シーズンはオールWNBA 2ndチームに選出されている。そして5年目の今季はキャリアハイとなる平均19.9点を挙げ、チームもプレイオフ進出を一番乗りで決めるなど絶好調をキープ。シーズンMVPの候補に挙げられるほどのシーズンを送っているが、目指すのはチームとしての成功だ。 「ニューヨークにチャンピオンシップを持ち帰る」 名実ともにリバティ、そしてWNBAの顔に成長した26歳は、自身そして球団初の優勝に向けて歩み続ける。
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