EUが日本に「人権条項」を要求 その背景は? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
捜査手法にも国際的な批判
刑事訴訟法では警察の留置が原則48時間(2日)までで、警察が「裁判を起こしてもらうか判断するに足りる」と考えたら検察庁に身柄が移されます。検察の取り調べは原則20日間までで、そこまでに起訴(裁判にかける)かどうかを決めます。日本の刑事裁判の有罪率は99%以上。ゆえに検察の起訴か不起訴かとの判断はまさに運命の分かれ道となります。この間、容疑者(罪を犯したと疑われる者)は基本的に外部と接触できません。 この制度を評価する側は、検察官がじっくりと人間関係を築き、精密に調書を作成できる。何もかも起訴する訳ではなく警察から送られてきても嫌疑がなかったり不十分であればしないし、あったとしても情状の余地などがあったら起訴猶予にする。検察が有罪の自信がある案件だけを裁判にかけているから有罪率の高さは当然だと主張します。 それに対して反対側は警察・検察の取り調べは「密室」であり、自白を強要されてもわからない。「認めれば裁判で有利になるよ」などと誘われたらぬれぎぬでも「自供」しかねない。それを防ぐにはイギリスやフランスのように取り調べの全過程を録音・録画する可視(見える)化を法で義務付けよと訴えます。 可視化は国連規約人権委員会も日本に勧告しました。それに慎重な意見の多くは「可視化したら供述が引き出しにくくなり、本来求められている真相究明に滞りが出る」「法制化したら捜査員や検察官が萎縮する」です。 検察の取り調べ段階で否認すると起訴後も保釈されない「未決勾留」も問題視されています。刑事訴訟法は起訴後の保釈請求を原則として「許さなければならない」としています。しかし実態は起訴内容を否認したり黙秘するとたいてい認められません。重罪の容疑の場合は認めてもダメです。結局、捜査機関に勾留されたままになって事実上「懲役スタート」のようになってしまいます。反対する側は「原則と例外の逆転だ」とし認める側は「逃亡や証拠隠滅の恐れがあるから仕方ない」と主張します。