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《記者コラム》ブラジルは意図せず「結果的に集団免疫」へ向かうのか

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ニッケイ新聞

「対策ナシならコロナ死者は100万人」

 「対策ナシならブラジルでは100万人がコロナで死ぬ」―この一言で、生物学者アチラ・イアマリノ氏(36)は、この検疫(クアレンテナ)期間中、爆発的に有名になった。  無名だった彼が3月30日に出演したTVクルツーラの討論番組ロダ・ヴィヴァのユーチューブ映像は、24時間で100万人が視聴した。いかにブラジル人一般がコロナを恐れているかが如実に伺われる。  最近のテレビを見ていてもニュースはコロナばかり。某銀行の「やがて過ぎる。それまでしっかり耐えて」のようにCMまでコロナばかりでウンザリする。  この点、インターネットで日本のテレビ番組を見ていて感心するのは、普通のCMが大半を占めていることだ。ブラジルが「コロナ一色」なのに比べて、日本の方は比較的に平静を保っていることが伺われる。  コロナ禍が過ぎるには、ワクチンや特効薬が開発されるか、集団免疫(集団の60%以上が免疫をもった状態)になるのを待つしかない。「少なくとも1年以上先」と考えたほうが現実的だ。  先日紹介した大阪大学元総長の平野俊夫教授(医学博士、免疫学、腫瘍病理学)の文章にあった通り、《本当は1万メートル競争、あるいはフルマラソンなのに100メートル競争のように全力疾走をすると、フルマラソンはもちろん1万メートル競争も完走不可能です。COVID―19との戦いは100メートル競争(水際作戦は100メートル競争です)ではなく、パンデミックになった現時点では、1万メートル競争、あるいはフルマラソンであることを認識する必要性があります。  ペース配分を十分に考えて走る(対策を立てる)必要があると思います》という言葉は何度も噛みしめる必要がある。

すでに5%が抗体を持っているという朗報

 16日付「カトラッカ・リブレ」サイト(https://catracalivre.com.br/saude-bem-estar/estudo-descobre-que-5-dos-moradores-de-sao-paulo-tem-anticorpos-contra-coronavirus/)には、「サンパウロ市では5・19%の人が抗体を持つ」との調査結果が報じられた。  「感染者数」とか「致死率」とか、あてにならない数字が独り歩きをしているのにウンザリしていた。まともな数字がようやく出てきたという意味で素晴らしい朗報だ。  サンパウロ州総合大学と同連邦大学が共同調査したもの。市内で感染者や死者が多い6区を選んで、520人の18歳以上の成人を抗体検査したもの。27人が抗体を持っていた。すでに感染・治癒した人だ。  仮に、これを大サンパウロ都市圏の人口2150万人に援用して、5%が抗体を持っているとすれば107万人だ。  17日現在でブラジル全体の公式なコロナ感染確認数は23万4千人。先の数字からすれば、大サンパウロ都市圏だけで、その4倍の感染者がいてもおかしくない。いかに日々発表されている「コロナ感染者数」という数字が意味のないものかが分かる。  しかもこれを母数にして死者数1万5662人を割って、致死率6・7%を出している。だから、恐怖をあおるような数字になっている。  感染者がはるかに多いということは、実際の致死率ははるかに低いということだ。実際の感染者は公式数字の「10倍から15倍」というのはすでに定説だ。ということは「致死率は発表されているものより、10倍から15倍低い」のが正しい数字だ。だがブラジル・メディアはほぼそれを言わない。  とはいえ、免疫を持っている人が全市民の60%以上にならないと集団免疫には達しない。  17日現在のサンパウロ州のコロナ死者は4501人だから、今のペースで集団免疫に至るまでには、今の12倍以上の死者が出る可能性がある。5万4千人だ。これが「死者数が一番少ない場合」のシナリオだ。  時間で考えてみると。3カ月で5%のペースで抗体所持者が増えるなら、あと12倍の時間がかかる。大サンパウロ都市圏が集団免疫に至るまでに36カ月(3年)かかる。あと3年の間、クアレンテナと準クアレンテナを繰り返しながら過ごさないといけない。まさに「マラソン」だ。  あと3年間、今の生活をして、どれだけの企業が倒産し、ブラジル経済はどうなるのか――。

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