マンガ大賞に東村アキコ氏 女性作家の受賞が続く背景は
書店員を中心とした選考委員が選ぶ『マンガ大賞 2015』に、東村アキコ氏の『かくかくしかじか』が選出された。今年で8回目を迎える同賞。今回で、7年連続で大賞に女性漫画家が選ばれたことになるという。このことで、女性漫画家や女性向けの漫画に勢いがあると考えて良いのだろうか。マンガランキング書籍「このマンガがすごい!」(宝島社)の編集長、薗部真一氏に寄稿してもらった。 --------------------- 「『マンガ大賞』の大賞の受賞者が第2回以降、7回連続で女性作者だったという。その背景にはいったいどんな理由があるのか?」というお題を頂戴したので、私が編集長をつとめる「このマンガがすごい!」を例に少し考えてみようと思う。 じつは、宝島社から毎年年末に刊行しているマンガランキング書籍「このマンガがすごい!」は今年で、10周年を迎える。性別を公表されていない作家さんも多いため、推測になるが、10回分のランキング(オトコ編、オンナ編)を大雑把に集計すると、男女の作家比率は、ほぼ同数。性別も正体もわからない『DEATH NOTE』の大場つぐみ先生が、噂どおりのあの人なら、男性がひとり多くなる計算だ。 とすると、お題にケチをつけるようでナンだが、「いま女性漫画家がキテる!」とは、ことさら言えないようにも思う。 そもそも、「マンガ大賞」の選者は、女性の書店員さんが占める比率が「このマンガがすごい!」より高い。それが理由なんじゃないの? ……なんて野暮なことを言ってもおもしろくないので、もう少し考えてみた。
「Zasshi-data.com」によれば、少女マンガ誌が46誌、女性マンガ誌が39誌、合計85誌あるそうだ。それに対し男性向けマンガ誌は、少年マンガ誌が28誌、男性マンガ誌が65誌、合計93誌と男性向けが少し多い。 しかし、男性向け雑誌に載っているマンガが、全部男性向けかといえば、それは大きな間違い。 たとえば、厳然たる男性誌「月刊アクション」に掲載されている『orange』(高野苺)は、もともと『別冊マーガレット』で連載されていた作品が、諸事情で「月刊アクション」に移った作品。当然、この作品を追っている読者は、女性がほとんど。ちょっとわかっている書店さんでは、女性向けコミックスのコーナーにおかれていることも多い作品だ。でも、僕も含め、「月刊アクション」での連載から追い始めた男性読者も、決して少なくないはず。 じつは、これは「このマンガがすごい!」も直面している問題のひとつ。「このマンガがすごい!」は、「オトコ編」「オンナ編」とランキングを分けている。でもここのところ、「これって、オトコ編?オンナ編?」という議論を編集部でしなきゃならない作品が急増しているのだ。たとえば、「このマンガがすごい!WEB」2014年6月のランキングでオンナ編1位に輝いた『Spotted Flower』は、男性誌である「月刊アフタヌーン」でかつて連載されていた『げんしけん』に登場するキャラクターとしか思えない、男女の物語だ。もちろん、連載開始時から『げんしけん』のファンがメインターゲットだったはず。だが、連載誌は女性向け作品を多数掲載する「楽園」だったのだ。 男性向け女性向けという区分が存在しないWEBマンガ媒体の増加も、これに拍車をかけている。正直言って、本当に毎日困っています。