すべての外国人の子どもに自国語の本を~多様性をめぐる大久保図書館の取り組み~【調査情報デジタル】
言葉はわからなくても「本が好き」というだけで、人は仲良くなれる。この大久保図書館のビブリオバトルは、今年で10回目を迎えた。いろいろな紆余曲折を経てきた。大変ではあるが、やめようと思ったことは一度もない。 ■本は友だち 小学校の頃だったと思う。本の名前は忘れてしまったのだが、「本を一冊読むということは、心の中に友だちが一人できることと同じ。だから世界中の本を読めば、世界中に友だちができることになる」。確かこのようなことが書いてあった。この言葉が頭に残っていて、以来、シェイクスピアやユゴー、トルストイなど海外文学を読むようになった。 そして巡り巡って、今の職場にめぐりあえた。仕事上、そしてプライベートでも、何人もの外国人の方々と接してきたし、親しくさせていただいている。この運命の不思議さに感謝をしている。 「国境を超えて、人種を超えて、差異を認め合うとともに尊重する。そして誰も置き去りにしない」。大久保図書館は、このような理念を掲げているが、平たく言えば、「みんな友だち」「みんな仲良く」ということだ。 翻って今の国際情勢に目を転じると、状況は厳しい。気持ちが暗くなる。でも希望を失ってはいけないと自分に言い聞かせている。まずは自分の身の周りから心を開いていく。世界の平和とは、遠い彼方の話ではなく、まず自分の目の前の人と仲良くしていくことから始まるのだと思う。 「なぜ山に登るのか」と聞かれて、「そこに山があるからだ」と答えた有名な登山家がいた。次元は違うかもしれないが、「なぜ人と会うのか」と問われたら、「そこに人がいるからだ」と答えるだろう。そこに人がいる限り、人と人とがつながり合える図書館を、力の限り目指していきたいと思っている。 <執筆者略歴> 米田雅朗(よねだ・まさお) 1964年東京都生まれ。 出版社勤務を経て、2007年より図書館勤務に就く。 2011年より現職。 【調査情報デジタル】 1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。
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