すべての外国人の子どもに自国語の本を~多様性をめぐる大久保図書館の取り組み~【調査情報デジタル】
ある時、外国人のお子さんが、小学校3、4年生レベルの日本語の本を選ぼうとしていた。不思議に思った先生が「あなた、まだこの本、読めないでしょう?」と聞くと、「これは、おかあさんのために、かりるの」。 おそらく、この子は、日常生活でお母さんが日本語で苦労している姿を目の当たりにしているのだろう。なんとかお母さんの力になりたい、喜んでもらいたいという気持ちから、自分が借りたい1冊を我慢して、その本を選んだのだと思う。「まあ、あなた、なんていい子なの!」と先生。わたしも傍らでこの光景を見ていて、思わず目がうるっと来た。 そう、本は間違いなく、国境を超えて、国籍を超えて、様々な形で、人それぞれにとって「生きる力」となっているのだ。 ■図書館は安全地帯 日曜日になると、いつもお父さんと一緒に来る、小さな外国人の女の子をよくお見かけした。とにかくお父さんにくっついて離れない。この子はお父さんのことが大好きなんだろうと、端から見ていてもすぐにわかる。お父さんは、いつも女の子と一緒に絵本を読んでいる。 いつだったか、お父さん、くたびれてしまったのだろう。うとうとし始めた。すると、女の子は女の子で、お父さんの傍ですやすやと眠っている。お父さんの傍というだけで、安心しきっている寝顔だ。その時は、周りにあまり人気もなかったので、そっとしておいた。 そう、図書館は「ホッとできる場所」なのかもしれない。 ■やさしい街に あるネパール人の方が、ネパールに帰った時に、ネパール語で書かれた本の、おすすめ本を何冊か購入して、その本を寄贈していただいた。大久保図書館の外国語の本の棚に、いわば、ネパール語のおすすめ本が加わったわけだ。 ある時、別のネパールの方がその棚を見て、「あ、この本は知ってます」とおっしゃった。寄贈をした方が、もしもこの言葉を聞いたら、どんなに嬉しく思ったことだろう。大久保図書館は、いろいろな国々の方々のご厚意によって支えられている。このことを、ゆめ忘れてはいけないと思う。