島津被告が完全黙秘 奥田交番襲撃で初公判、弁護側は強盗殺人否定
2018年に富山市で起きた奥田交番襲撃事件で、強盗殺人罪などに問われた元自衛官、島津慧大(けいた)被告(24)=立山町=の裁判員裁判が14日、富山地裁(大村泰平裁判長)で始まった。初公判で島津被告は、人定質問と罪状認否に一切答えず、弁護側は強盗殺人罪の成立を否定した。 起訴状などによると、島津被告は2018年6月26日午後、富山中央署奥田交番で所長の稲泉健一警部補=当時(46)=を刺殺し、奪った拳銃で近くの奥田小学校正門付近にいた警備員、中村信一さん=同(68)=を射殺したとされる。 冒頭陳述で検察側は、被告は社会への不満を募らせて自暴自棄になり「警察官と闘って勝利することで、社会に自分の力を誇示したいと考えた」と指摘。「拳銃を奪って次々に警察官を殺害する目的で交番を襲撃し、警部補を殺害した」として、強盗殺人罪に当たると訴えた。被告には発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害があるものの、事件への影響は限定的だったとした。
弁護側は「自分より強い武器を持つ相手と闘うことだけが被告の目的で、その先は考えていなかった」と強調。その上で、拳銃を奪おうと思ったのは警部補殺害後だったとして、殺人と窃盗の両罪が適用されるにとどまると主張。発達障害の程度にも触れ「共感力と想像力に欠け、事件にさまざまな影響があった」とした。 中村さんへの殺人や銃刀法違反の罪などについては、起訴内容を認めた。 この日は、交番襲撃の直前に被告が傷害事件を起こしたファストフード店の男性店長(当時)への証人尋問もあった。男性は、業務に関して注意すると暴力を振るわれたと証言した。 今後の公判では、証人尋問や被告人質問、被告の精神鑑定を担当した医師らへの尋問が予定されている。 2月4日の論告・弁論を経て、3月5日に判決を言い渡す。 ■殺害経緯で主張食い違い 検察、弁護側の冒頭陳述では、島津被告が事件直前に「自分は社会不適合者だ」との思いを募らせ、自暴自棄になり奥田交番を襲撃したことが明らかになった。ただ、警察官を殺害して拳銃を奪った経緯について、双方の主張が食い違った。