幸福をつかむ、得意なことで「フローに乗る」大きな効用とは?
ストックホルム商科大学経営戦略およびマーケティング学部教授である『幸福についての小さな書』(ミカエル・ダレーン 著、中村冬美、柚井ウルリカ 訳、サンマーク出版)の著者は、ずっと幸福に強い関心を抱いてきたのだそうです。 とはいえ自分自身を幸せにするのが得意だというわけではなく、むしろすぐに落ち込むほうなのだといいます。だからこそ何年もの間、自身の研究のなかで何度もこのテーマを取り上げ、独自の調査を行ってきたのでしょう。 研究によってすべての答えが得られたわけではないものの、いくつかのパターンを見つけることができたのも事実。そこで、それらをシェアしようという思いから本書を書いたというのです。 現時点での幸福研究の最新分野から、いくつかわかったことをピックアップして、『幸福についての小さな書』を書きました。この本には幸せを感じるためのコツが載っていて、読んだあなたがちょっと嬉しくなることを願っています。 幸福について少し物知りになって、時々人生が辛くなったときに思い出し、できればあなたがその日をちょっと楽しく過ごすことができますように。(1ページより) こうした思いを前提として書かれた本書のなかから、きょうは8.「『得意なこと』をしよう ねらって「フロー」に乗り、没頭する」に注目してみたいと思います。 幸福についての小さな書 1,320 Amazonで見る 1,320 楽天で見る
フローは「再現」できる感覚
幸福研究者たちは、「フローに乗る」(時間を忘れてある活動に完全に没頭している心理的状態)という表現をするのだそうです。ちなみにフローに乗っている人は、ほかの人よりも幸福感がやや高いのだとか。たしかに、すべてが自分の思い通りになっているときの感覚は、誰でも多少は経験したことがあるのではないでしょうか。 しかしその感覚を、単純に運だと思ってはいないか? 著者はこの点を指摘してもいます。 フローというのは、幸福(lycka)という単語と同様に、元々は運と同義だ。 「運がよかったから(流れがよかったから)成功できたんだね!」とつい言ってしまいがちだ。 しかし、インゲマル・ステンマルク[スウェーデンの、アルペンスキーの国民的ヒーロー]はかつてこう言った。 「運については何も知らない。ただ、トレーニングすればするほど運気が上がることだけはわかっている」 これは「フローに乗る」のとまったく同じだ。何かをするのがうまければうまいほど、それをしたときにフローに乗っている感覚が得られるのだ。(86ページより) これは、ギターを弾くときにも、料理をするときにも、数式を解くときにも、コンピュータゲームをするときにも、山に登るときにも、仕事でプロジェクトを率いるときも同じ。 注目すべきは、研究結果が「得意なことをするときはフローに乗っている感覚がある」ことを示しているという事実。研究者たちが被験者に対し、1日のうちのランダムな時間に幸福の尺度に丸をつけてもらい、「そのときなにをしていたか」を書き留めてもらったところ、フローに乗っているときのほうが、やや高い数字に丸をつけるということがわかったというのです。 すべてのことがらに共通しているのは、彼らが自分にできる限界を見極めながら、難しい技に挑戦しているという点。 たとえば、自分にできるなかでいちばん難度の高いゲレンデに出て勢いよく滑降したり、いろいろなスキルを必要とする新たな料理を試したりするなどがそれにあたるわけです。 重要なポイントは、うまくなればなるほど難易度の高いことに挑戦する勇気が出ること。しかも、自らをコントロールできると感じるようになるほど、うまくフローに乗れるようになるのだといいます。(85ページより)