「コンプレックスを抱え、自信のないモデルたちと対峙し」日本初のプラスサイズモデル事務所・代表の桃果愛「言い続けることは根気がいるけど」
── 現在はどんな仕事を受けているのですか? 桃果さん:ファッションの撮影、ドラマやCMの撮影、あとは企業とのコラボで商品開発をすることも多いです。現在はプラスサイズモデルだけではなく、ジェンダーレスや多国籍など、個性的なモデルも含めて約80名と契約しています。今年の12月3日にはグローバルモデル・タレントエージェンシーとして株式会社W IMPACT(ダブルインパクト)を設立しました。 ── プラスサイズモデル以外に幅を広げた理由は何ですか?
桃果さん:私が起業したころは、「プラスサイズモデル」というジャンルが海外では一般的でしたが、日本ではまだ認められていなかったんですね。なので、「プラスサイズモデル」という立ち位置を確立するのが最初の目的でした。そこから7年経ち、日本でもプラスサイズモデルという職業が浸透してきたと感じています。最終的には人種やジェンダー問わず多彩なモデルが活躍できたら、という思いがあるので、個性的なモデルの所属も増やしています。
■自分に自信を持ってもらうことからスタート ── 個性的なモデルを抱えた事務所を経営するにあたり、いちばん大変なことは何ですか? 桃果さん:モデルの教育です。一般的なモデル事務所だと、自分のスタイルやビジュアルに自信がある人が入ってくると思うんです。でもプラスサイズモデルを目指す人や個性が強い人は、何かしらコンプレックスを抱えていて、今までの自分に自信がない。だからまず、本人たちに自信をつけてもらうところから始めます。「あなたはそのままで魅力的だよ」「あなたのこういうところが素敵だよ」「あなたのここがかわいい、きれいだよ」と繰り返し伝えます。どうしても人にけなされた過去がある人は、そう言われてもなかなか自信が持てないので、「大丈夫だよ」と言い続けるところは根気がいるなと思います。
モデルの仕事は毎月決まったお給料が入る会社員と違い、オーディションを受けて、その都度仕事を自分で取ってこないと、お金になりません。オーディションの不合格が続くと自信がなくなり辞めてしまうモデルもいます。そうならないために、「オーディション不合格はあなたが悪いわけじゃなくて、たまたまクライアントの求めるイメージに合わなかった、監督の好みに合わなかっただけだよ」といった声がけをしています。 もちろん先方の求めるイメージに近づける努力はしたほうがいいけれど、自分自身を否定されたわけではないということは常々伝えるように意識していますね。もともと自分に自信のない子たちがモデルというサバイバルを続けていくのは、かなりハードルが高いなと実感しています。