米エネ政策転換へ体制着々 トランプ氏、要職人事と新組織で
【ワシントン時事】トランプ次期米大統領が、石油など化石燃料を重視するエネルギー政策への転換に向け、体制整備を着々と進めている。 司令塔として「国家エネルギー会議」を新設。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱を明言し、バイデン政権の気候変動対策の目玉である電気自動車(EV)への税制優遇廃止も検討している。 「『米国のエネルギー支配』を推進し、インフレを低下させ、中国との人工知能(AI)軍拡競争に勝利する」。アゼルバイジャンで国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が開催されていた先週末、トランプ氏は、エネルギー長官にシェールオイル・ガス採掘の「先駆者」として知られるクリス・ライト氏を指名すると発表。化石燃料開発を加速させる方針を改めて示した。気候変動政策の継続を表明した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を含め、相次ぐ国際社会からのけん制も意に介する様子はない。 国家エネルギー会議は、ライト氏を含むエネルギー関連の許認可や規制緩和などの関係閣僚らで構成。トップには、化石燃料資源を抱える中西部ノースダコタ州のダグ・バーガム知事を起用し、公有地の石油採掘地を管理する内務長官も兼務させる。ホワイトハウスに気候変動政策全体の調整役を置いたバイデン政権を参考にした。 ロイター通信によると、バーガム氏は早速、シェール開発の立役者として名高い米国の「石油王」、ハロルド・ハム氏らと具体策を協議。EV税額控除を廃止し、所得減税の財源に充てる計画を議論している。EV普及を後押しした自動車の排ガスや燃費規制も緩和する計画だ。 ただ、EV税額控除やクリーンエネルギー関連補助金などを盛り込んだインフレ抑制法の恩恵は、自動車業界や共和党色の強い州にも及ぶ。EVやバッテリーメーカーが加盟する米業界団体や、共和党内でもEV税制優遇や補助金の存続を求める声が出ており、先行きは見通しにくい。