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VRを最大限に活用! MPCのVFXスーパーバイザーが語るフルCG映画『ライオン・キング』の挑戦

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CGWORLD.jp

実写かと思うほどのリアルなCG・VFXで作られた映画『ライオン・キング』(2019)。制作を担当したMPC Filmは、総勢1,150名(うちアニメーターは約130名)で1,500ショットを超えるCG・VFXを手がけている。 昨年11月、幕張メッセにて開催されたメディア&エンターテインメントの総合展示会Inter BEE 2019では、2日にわたって本作のメイキング講演が行われ、立ち見が出るほどの盛況となった。本稿では、その際に実施されたMPCのVFXスーパーバイザー、Elliot Newman/エリオット・ニューマン氏のインタビューを紹介したい。

誰もが知る作品を実写映画として新たにつくるために

CGWORLD(以下、CGW):簡単に自己紹介をお願い致します。 エリオット・ニューマン氏(以下ニューマン):キャリアの最初はロンドンのEscape StudiosでMayaやUnityを修得し、その後同じくロンドンのPinewood Studiosで名だたる方々と一緒に仕事をしました。そうして、2004年にMPCに移りました。モデリング、テクスチャ、アセット、スーパーバイザーなど様々な仕事を経て、現在はVFXスーパーバイザーをしています。 CGW:MPCについてご紹介ください。 ニューマン:MPCはビジュアルエフェクトカンパニーでロンドン(イギリス)、バンガロール(インド)、モントリオール(カナダ)などに主要スタジオを構えています。ハリウッド業界に多くのクライアントがいるため、LAにはビジネスチームの駐在オフィスがあります。 ディズニーの仕事、ストリーミングの仕事などを手がけており、ロンドンとモントリオールが今は大きなブランチです。プロジェクトのタイミングによって、担当する場所も規模も変わってきます。インドのバンガロースタジオは一貫してメンバーが増え続けています。 CGW:各ブランチの間では、時差や距離をどう克服していますか? ニューマン:ロンドンは世界標準時なので、それを活かして時差を合わせ、ビデオ会議をしています。MPCは、ソフトウェアも制作中のデータも世界中で同時に観られて、作業できるようなしくみをもっています。重要なショットの場合は制作場所を移動して作業を手伝ったり、予算が足りないときには融通したりと、世界各地のスタジオがまるで1つの大きな作業部屋にあるかのような感覚で制作を進めることができます。 CGW:『ライオン・キング』のVFXでは、どういったことに挑戦されましたか? ニューマン:『ライオン・キング』は、動物どうしのインタラクション、ジャングルの広大な環境も全てCGで作られています。台詞を話し、演技するヒーローアニマルが登場し、数多くのとても複雑な視覚効果が含まれています。また、後から立体効果を加えるのではなく、はじめから立体映画として作られています。 挑戦や苦労をひとつに絞るのは難しいですが......本作はアニメーション作品である『ライオン・キング』(1994)のリメイクであり、VFXチームとしてこれをどう実写映画として作り直すのか、というところです。世界中の多くの人がアニメーションの方の『ライオン・キング』を観ています。その作品をCG・VFXでやり直すのが難しくもあり、チャレンジでもありました。 特に、舞台となる環境づくりが大きなチャレンジでした。本作の舞台は『ジャングル・ブック』(2016)とは比べ物にならないくらい複雑でとても広く、樹木や草花が数多く茂っており、風も吹いている。これを組み立てるのは大変な作業でした。 ※編集注:『ジャングル・ブック』も『ライオン・キング』と同じくジョン・ファヴロー監督作品。ジャングルが舞台の作品ながら、現地での撮影をなしにほぼ全てグリーンバックのセットで撮影、ほとんどのシーンでCG・VFXを活用したことで話題となった ハイパーリアリズムなシーンもチャレンジのひとつでした。ドキュメンタリー風の映像を監督が好んだので、ドキュメンタリー映像を観ているようなリアルな毛並みに仕上げたかったのです。『ジャングル・ブック』でも同様の表現はありましたが、ファーに関しては今回新しいテクノロジーでもう一度作り直して使われました。 CGW:壮大なジャングルを描いた作品を、なぜ100%CGで作ろうと考えたのでしょうか? ニューマン:リアルな写真の動物も、ジャングルの背景も、実際に撮影してしまうと、その後に自由がききません。背景を延々と繋げて見せるとか、動物に思っていたように動いてもらうとか、CGを使う方が実際に撮影したものよりもコントロールが自由に細かくできるので、映像の生産性が上がるのです。 今回は監督が考えている映像を撮るための手段としてCG・VFXがベストだったということ。やり方はそれぞれで、目的を定めて、求めるクオリティに達するのであれば、実際に撮影する方が良いことも、CGで撮る方が良いこともあるのです。 CGW:『ライオン・キング』では、CG・VFX制作にVRが活用されたとのことですが、なぜVRを使うことになったのでしょうか? ニューマン:ジョン・ファヴロー監督が、前作『ジャングル・ブック』で考えていたことを本作で実現するためにVRを活用しました。Mayaで全てのシーンのバーチャルセットを作成してUnityに読み込み、撮影スタッフがVR HMDをつけてVR空間内をバーチャルカメラで撮影するのです。このバーチャルプロダクションシステムの開発はアメリカのVFXプロダクションMAGNOPUSとの提携によるもので、従来の実写映画制作者でも、このシステムを使えば違和感なく作業できます。 CGW:VRを活用した制作のメリット、デメリットは? ニューマン:メリットは、撮影しながらカメラアングルを決めたり、カメラの動きを決めたりといった従来の撮影スタイルで制作ができることです。ですが、バーチャルカメラの映像と、実際のフィルムイメージとを物理的に完全には一致させれられないところがデメリットではありました。 バーチャルセットの良いところは、現実世界の物理的な制限を受けないところです。急にセットの大きさを2倍にしたいとか、ちょっと試しに小さいセットを用意しようという作業があっという間に可能であることが圧倒的なメリットです。スタジオの中に物理的に設置されたセットでは、そう簡単にできませんからね。 CGW:まるで実写のようなCG・VFXですが、リアリズムとアクションとのバランスはどのように考えていますか? ニューマン:演出のスキルも必要ですし、何度も何度も映像を確認してみるのが大切です。『ライオン・キング』ではアニメーションスーパーバイザーのAndrew R. Jones/アンドリュー・ジョーンズ氏と監督が密接にやり取りしながら制作が進められました。毎日成果物をレビューしては、演出のバランスを取っていきました。 動物の演技、ビジュアルが監督の求めるクオリティに達しているか否かを重要視しています。動物たちの演技が人間的であることも重要ですが、一方で人間っぽくなりすぎたり、動物的すぎたりする部分はあえて取り除き、演技としての表現に注力した場面もあります。 CGW:次に同じような挑戦があった場合、どういう挑戦がしたいですか? 何を改善したいですか? ニューマン:徐々に改善していくことが大切です。『ジャングル・ブック』で実現したことがベースになって『ライオン・キング』が完成しました。そして『ライオン・キング』で経験したこと、学んだことは、今後の作品に活かしていけると考えています。環境づくりも、レンダリングも、モデリングも、それらの作業をより良く、より速くすることが次に考えていることです。 映像制作においては「時間が全て」です。時間があれば、より複雑にでき、結果をより良くすることができます。映像制作のたびに毎回やることが複雑になっているので、制作のスピードを上げていかなければなりません。前回と同じでしかないのであれば、それは「失敗」なのです。 CGW:ありがとうございました。 ※本記事はCGWORLD.jpからの一部抜粋です

安藤幸央

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