米株式市場の果てしない動揺、押し下げ続く底値のめど
(ブルームバーグ): インフレ動向やリセッション(景気後退)の可能性を巡り、週ごとに計算し直さなければならない状況にあって、米株式相場は均衡を見つけられずにいる。市場の動揺がいつどこで止まるかの見通しはますます悪化するばかりだ。
そして5日も乱気流は続いた。取引開始早々に前営業日比2%強下げたS&P500種株価指数は、終盤にかけて小幅上昇に転じた。日中のこれほどの下落からプラスに転じて終了したのは2022年入って4回目で、09年以降で最多だ。
相場の回復を主導したのは投機的なテクノロジー株だった。キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントの旗艦上場投資信託(ETF)「アーク・イノベーションETF」(ティッカー ARKK)は9%強上昇。トレーダーは売り込まれたセクターの割安株を物色し、利回り低下で赤字企業への圧力は弱まった。
弱気見通しが一段と高まったものの、相場は反転した。ドイツ銀行が先週実施した調査では、S&P500種が4500に上昇するよりも先に3300に下落すると予想した回答者が全体の72%を占めた。同指数の5日終値は3831.39。クレディ・スイス・グループのジョナサン・ゴラブ氏はウォール街のストラテジストに追随し、相場見通しを下方修正した。
過去のデータは悲観論者に味方している。ストラテガス・セキュリティーズは、今の市場と経済指標を過去90年間の弱気サイクルと比較し、株式相場の下落局面が終わりだと考える理由はほとんどないことが分かったとしている。
ジェイソン・トレナート氏ら同社ストラテジストはリポートで、「データを検証した結果、弱気相場の底にもう達したと確信を持って主張することは難しいだろう」と指摘した。
米連邦準備制度が高騰する物価の抑制に向けここ数十年で最も積極的な金融引き締めに乗り出し、米株式市場は直近の高値から時価総額が15兆ドル(約2030兆円)も減少した。借り入れコストの上昇を受けて投資家は株式を再評価しており、バリュエーション(株価評価)は歴史的に見て目立って速いペースで低下している。