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幸せな主婦がひょんなことからコメディアンの道に!?

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キネマ旬報WEB

配信ムービー・ピックアップ・レビューその2 『マーベラス・ミセス・メイゼル』

数ある配信ムービーのなかから、選りすぐりの作品のレビューをお届け。文筆家・長谷川町蔵氏によるオススメ第2弾は、2020年代のロマンティック・ コメディを牽引していく女優によるによるシリーズ!

幸せな主婦がひょんなことからコメディアンの道に!?

 1958年のニューヨーク。アッパーウエストの高級マンションに住む専業主婦で二児の母でもあるミッジはある日、夫の浮気を知ってワインを痛飲。泥酔状態のままナイトクラブのステージに乱入して愚痴をブチまけたところ客に大ウケしてしまう。その様子を目撃していた店員のスージーは彼女の笑いの才能に驚嘆。自らマネージャー役を買って出て、ふたりはスタンダップコメディ(漫談)のシーンへと足を踏み入れていく……。  『マーベラス・ミセス・メイゼル』のこうしたプロットを読んで、サリー・ フィールドとトム・ハンクスが共演した「パンチライン」(88)のような物語を想像してしまう人は多いはずだ。しかし本作はそ んな安易な予想の裏をかく。仕事と子育て が両立できないとか、お堅い両親との葛藤 といったウェットな要素は意図的にスルー。代わりに 50年代末のポップな風俗とともに、 主人公をやがて訪れる変革の60年代の先駆けとしてポジティブに描いているのだ。  そんなポジティブな光が眩いからこそ、闇も映える。ミッジが実在の天才コメディアン、レニー・ ブルースや前衛画家と交流するエピソードは、 お笑い芸人が必然的に抱えている狂気をこれ以上ないくらい鮮やかに表現している。又吉直樹は『火花』を書く前に本作を観るべきだったと思う。  クリエイターは、「ロッキー」シリーズのバー テンダー、アンディ役で知られるスタンダップ コメディアン、ドン・シャーマンの娘でもあるエイミー ・ シャーマン=パラディーノとその夫ダニエル・パラディーノ。ファミリードラマ でありながら、ダイアローグの中にマニアックなポップカルチャー・ネタが次々飛び出すことで今なおカルトな人気を誇る『ギルモア・ガールズ』(TV、00~07)の作者として知られていたコンビだが、アマゾンの豊富な製作資金を得た今作では映像作家としての才能も開花している。ユダヤ系上流階級の避暑地として知られるキャッツキルや黄金時代のラスヴェガスを舞台にしたエピソードで展開される視覚的なギャグは、 ジャック・タチの監督作のようだ。  ジョーン・リバースら黎明期の女性スタンダップコメディアンたちを統合させたかのような主人公ミッジを快演しているのは、ネットフリックスドラマ『ハウス・ オブ・カード 野望の階段』のレイチェル役で注目されたレイチェル・ブロスナハン。キュートなルックスとマシンガントークを武器に、2020年代のロマンティック・ コメディを牽引していく女優になるはずだ。 文=長谷川町蔵

『マーベラス・ミセス・メイゼル』はAmazonプライム・ビデオにて配信中!

2017年製作・アメリカ・テレビシリーズ(シーズン1~3) 製作総指揮:エイミー・シャーマン=パラディーノ 出演:レイチェル・ブロス ナハン、マイケル・ジーゲン、アレックス・ボースタイン

キネマ旬報社

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