【#佐藤優のシン世界地図探索88】トランプ革命③ 敗北した「西洋の惨状」
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――前回の連載でのお話で、米国内の「トランプ王」の執政スタイルはわかりました。一方、以前エマニュエル・トッドの新刊『西洋の敗北』(文藝春秋)の内容を説明していただきましたが、敗北した西洋はどうなるのですか? 佐藤 ヨーロッパであり得るのは「ドイツのための選択肢」や、フランスならば「国民戦線」。こうしたものが無視できない力を持つようになっていきます。 ――すなわち、各国の極右化ですか? 佐藤 そういうことです。ドイツとフランスは極右化します。そして、米国の主要なパートナーである米英同盟は不変です。その座組には独仏がいましたが、ウクライナ戦争によって独仏は外れ、ポーランドとウクライナに入れ替わりました。ウクライナ戦争以降は、米英、ポーランド、ウクライナ、この四ヵ国が極めて好戦的な枢軸となっています。 ――すると、NATOは消滅でありますか? 佐藤 その可能性はあります。NATOよりも、英米、ポーランド、ウクライナに積極的に関わっていきたいヨーロッパの国はどれくらいあると思いますか? ――あまりいないかと。すると、ドイツに付くのか、フランスに付くのか......。 佐藤 そうはならず、固まりません。バラバラになります。 ――NATOが誇った集団安全保障の力が全くなくなるのですか? 佐藤 はい。それから、ほとんどの国が国内政治にエネルギーを割かれます。 ポーランド、ウクライナは、政党政治が馴染まないので大統領の独裁制となるでしょう。二大政党が残るのは米英のみで、それ以外は全て小党分立となります。そして、過半数を超える政党はひとつもないという状態になっていきます。 実際、いまのベルギーや北欧はこれに近い状態です。社会のニーズが様々ですからね。日本もやがてそうなりますよ。 ――21世紀の"東ローマ帝国"となった米国の「トランプ王」は、プーチン露大統領とどう関わっていくのですか?