お金がないのも当然…日本人にありがちな「持たざる者」の思考
世間を騒然とさせた「老後2000万円問題」。いま、自分の老後生活が気にならない日本人はいないでしょう。多くの日本人にとって、資産を形成する方法は「預金」です。働けるうちに多くを稼いでコツコツと貯蓄をしようと考えている人がほとんどでしょう。「過労死」という言葉がそのまま世界に輸出されてしまったほど、日本人は異常な働き者です。しかしその割には「お金持ち」が少ないのはなぜでしょうか?
異常な「預金」信仰は、低すぎる金融リテラシーの現れ
「お金がお金を生む仕組みを理解し、実践する」。これは金融リテラシーといえます。リテラシーとは「理解し、活用できる能力」のことです。 現代社会で経済的な豊かさを享受するには、お金との関わりは避けて通れません。一生懸命働いて得たお金を銀行口座に入れっぱなし…ではインフレリスクにさらされます。これらのリスクを避けるためのスキルとして金融リテラシーを身に付ける必要があります。 以前から日本人は欧米人に比べて金融リテラシーが低いといわれてきました。例えば、日本人でもちょっとアンテナの高い人なら、現在1ドルが何円くらいか把握していると思います。しかし、「今は円高だからドル預金をしよう」とすばやく行動する人はなかなかいません。ところが欧米諸国では、このような動きをすることが当たり前となっています。 欧米では、学校で金融の基礎知識や適切な資産運用方法などの教育が一般的に行われています。必修科目として授業に取り入れている学校も少なくありません。
生活スキルとして最低限身に着けるべき金融リテラシー
このような背景から、日本でも金融庁が2012年11月に有識者・関係省庁・関係団体をメンバーとする「金融経済教育研究会」を設置して、今後の金融経済教育のあり方について検討を行いました。そして2013年4月に公表された報告書では、現代社会の「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシー」が示されています。 具体的には、小学生から高齢者の7つの年齢層に対し、それぞれ「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」「外部の知見の適切な活用」の4分野について説明しています。 読者の多くは、大学生と高齢者の間の「若手社会人」か「一般社会人」が多いのではないでしょうか。同報告書では、この2つの年齢層を次のように定義づけ、必要な金融リテラシーを紹介しています【図表】。 ここで注目していただきたいのが各項目の「行える」という部分です。いくら知識があっても、それを活かして行動できなければ意味がありません。 また、現在はインターネットやスマートフォンの普及などで情報=知識は大量に収集できます。しかし、その知識が事実か、自分に適しているのか、は自分自身で見極めなければなりません。そのことも金融リテラシーの一部として非常に重要です。