Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

【論説】英国にとって賢明な道はEU側の自由貿易協定のロードマップに応じること

配信

The Guardian

【ガーディアン論説委員】  ボリス・ジョンソン英首相は昨年、英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)で一つのみならず二つも勝利を収めた。EUと新たな離脱合意を獲得し、総選挙で野党合計に80議席差をつけて過半数で勝利したことだ。しかしこうした出来事は、ジョンソン氏と、政界での同氏の未来にとって非常に重要ではあるものの、英国経済にそこまで影響を与えはしなかった。ジョンソン氏の首相職は、ブレグジットに対する懐旧の感情に依存している。筋金入りの離脱支持者は、自分が思い描く過去、すなわち「欧州共同体(EC)加盟前の英国」の方が暮らし向きは良かったと思い込んでいる。こうした人々は、ジョンソン首相を支持し続けるだろう。たとえブレグジットによって経済的利益が一切生じなくても、ジョンソン氏は過去の栄光を取り戻せると主張しているからだ。  ブレグジットに関する話の大部分が漁業、農業、工業に終始しているのはある意味、当然だ。英国が欧州の共同市場に加わる前は、労働力の約3分の1が製造業に従事していた。この数字は現在、10分の1以下にまで縮小した。熱心にブレグジットに票を投じた農業・漁業従事者が国民所得に占める割合は、それぞれわずか0.6%と0.1%未満にすぎない。残りはほぼすべてサービス業。法律事務所からメディア企業、タクシーから美容院に至るさまざまのサービス業だ。仕事はより不安定になったが、可処分所得は実質的にはEC加盟前のほぼ倍になった。  英国を製造拠点として復活させること、そして農業の工業化が進んだ今、これまでとは異なる、より持続可能な農業拠点を開発することを目指すのはもっともだ。しかし、EUとの貿易関係の交渉に失敗していては、こうしたことをどう実現できるのかが見えてこない。  ブレグジットは、英国がEUを離脱しただけでは成立しない。世界の多国間貿易制度は、複数の面で緊張の兆候を見せている。とりわけ、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハラウンド)は合意に至っておらず、サービス業、農業補助金、デジタル貿易などといった重要な領域では進展が見られていない。ブレグジットはニューノーマル(新たな常態)の一部であるというより、一時的な障害である方が当時者全員にとってはましだろう。  英国が一度EUの単一市場と関税同盟から離脱すれば、経済の勝者と敗者が生まれる。EU市場へのアクセスと、EUの規則にどれほど忠実に従うかの間には、妥協による取引が求められる。英国とEU間でモノとサービスが移動する際の障壁は、関税を課される単一市場の境界線だけではなく、国内にもあると言っていいだろう。国内では、原産地ならではの基準や規則を順守しなければならないからだ。もし英国が、EUと貿易協定を結んでいないオーストラリアに似た立場になってしまった場合、財務省の計算によると英国のGDPは7.7%減少する。  ジョンソン氏にとって賢明な道は、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官が提案する、実行可能で永続性のある自由貿易協定に向けたロードマップの申し出に応じることだろう。この協定は、英国とEUのパートナーシップの中枢となる。一方で重要なのは、貿易交渉は3月まで始まらないことから、3日にジョンソン氏とEU側が行った発言の多くは、政治的に着色されたものであることを留意しておくことだ。  バルニエ氏は英国に対し、「公平な競争の場と必要な実施体制を築くために妥協せずに取り組む」ことと、EUの漁業への長期的な保証を求めると述べた。ジョンソン氏は、「これらの分野において最高の水準」を維持するとし、そして現在同様に毎年、制度を見直して、EUの船舶が英国の領海で操業できるようにすると明言した。洞察力のある専門家らに言わせれば、英国とEU間の差は、ここでほのめかされたレトリックよりは小さいという。格差は可能な限り小さい方がいい。【翻訳編集】AFPBB News 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

【関連記事】