戦時中のお盆も「帰省は自粛」だった? 当時の資料が語る人々の暮らし
「自粛」をうたうビラ、「お盆に帰省しないで」と呼びかける回覧板、そして「愛国」と記された布マスクーー。
まるでつい最近のものにも思えるが、これらはどれも、戦前から戦時中の、庶民の暮らしを伝える貴重な資料だ。どれも、ある男性が自費で収集したコレクションの一部。これまで集めたという戦争関連の資料は、実に5000点を超える。これまで投じてきた私費は100万円を優に超えるという。いったい、なぜ収集を続けているのか。戦後75年の節目、その思いを聞いた。【BuzzFeed Japan/籏智 広太】 【写真】戦時中の「布マスク」に軍人精神注入棒
「僕が戦時下の資料を集めている大きな理由は、資料は絶対に否定できない存在であるからなんです。美化も歪曲もされていない、本当の当時の姿を知ることができる」 そうBuzzFeed Newsの取材に答えるのは、「信州戦争資料センター」の代表を務める50代の男性だ。 長野県内に住む数人の有志が集まって運営している。「センター」というが建物があるわけではなく、年に一度の展覧会やブログ、Twitterでの情報発信が活動の中心だ。 資料の収集は男性がひとりで担う。これまで自費で収集してきた資料は5456点(2020年8月現在)にのぼり、その種類も幅広い。 雑誌や新聞、政府が戦意発揚のために国民向けに発行した「写真週報」などの印刷物にはじまり、子ども向けのおもちゃやプロパガンダに用いられた国策紙芝居、百貨店のカタログやチラシ、日記や手紙、物資不足のために使われた食器やアイロンなどの「戦時代用品」、そして地域の回覧板にまで及ぶ。 「庶民の生活を軸に、それを取り巻いていたものを集めています。戦争は、前線と後方なんていう区別はなく、生活のあらゆる側面を飲み込んでいく。国全体で動かしていくものですから、歴史を復元していくときに、行政による文書やオーラルヒストリーで残されてきた部分のあいだ、隙間を埋めるような品々が必要だと思っているんです」 「こうした資料からは当時の人たちが歯車のなかで一生懸命になって、戦争を遂行しようとしていたことが伝わってきます。そうやって当時の空気がどういうふうに醸成されていったのか、リアリティを感じてもらいたい。過去は今と断絶したものではなく、つながっているのだから」 そんな思いから、男性は資料を淡々と、センターのTwitterで紹介していく。冒頭に記した「布マスク」(戦前の軍隊マスクとみられる)についてはネット上で大きく話題を呼んだ。