なぜいま香港の民主派リーダー45人に懲役刑が宣告されたのか 「香港にとって微妙な時期」と米紙が指摘する理由
香港の裁判所は11月19日、民主派の元議員や活動家45人に対して、最長で10年の懲役刑を言い渡した。 【画像】45人に対する判決が下されたあと裁判所の外で泣く女性 民主派は2020年に、議会にあたる立法会の選挙に向けて予備選挙を実施したが、それは「国会政権の転覆をはかった」もので、国家安全維持法に違反したとして、中心的な役割を担った47人が2021年2月に一斉逮捕・起訴されていた。 以来、そのほとんどが公判前拘留されていた。2024年5月に公判があり、31人が減刑を願って有罪を認めた一方で、14人が有罪判決、2人が無罪判決を受けていた。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」によれば、被告45人は19日、彼らを収容するためだけに作られた法廷の長椅子に肩を並べて座らされた。裁判官がそれぞれの判決文を読み上げる際には、被告人は名前ではなく、リストに載っている番号で呼ばれた。公判は30分で終わったという。 香港で2019年に中国政府に対する大規模な抗議運動が何ヵ月も続いたことで定められたのが、国家安全維持法だった。今回の公判では、その威力が最も強硬に示されたと同紙は書いている。 東京大学の客員研究員で、香港と中国での表現の自由について研究するパトリック・プーンは、同紙に次のように語っている。 「大勢を一挙に裁判にかける力が自分たちにはあるのだということを当局は公衆に示したかったのです。この集団みたいに抗議しようとする者は誰であれ、彼らと同じ運命を辿るのだと──」
判決のタイミングは次期トランプ政権と関係している?
香港の司法も、中国政府と足並みを揃えていると指摘する識者もいる。米ジョージタウンアジア法センターの特別研究員エリック・ライは、米紙「ワシントン・ポスト」にこう語っている。 「(香港の)裁判所はいまや、中国政府の筋書きからほとんど逸脱しなくなっています。裁判官たちは、政府の路線を前進させようとしています。民主派の抗議運動や戦略についても政府の定義を用いて、権利や自由に重点を置こうとはしていないのです」 同紙は、今回の一斉判決が香港にとって微妙な時期に下されたと識者たちが見ていることも伝えている。それは米国の次期トランプ政権が、より自由な香港を長きにわたり支持してきた対中タカ派だらけだからだ。 ドナルド・トランプが次期政権の国務長官に任命する予定のマルコ・ルビオ上院議員は、香港の民主運動を何十年にもわたり応援してきた。米国が香港と中国の役人たちに制裁を課す道筋をつけた法案の発起人のひとりでもある。 しかもルビオは、今回の判決で4年8ヵ月の懲役を言い渡されたジョシュア・ウォンなど香港の民主活動家たちと何度も面会してきたと同紙は述べている。 米国の対中タカ派からの横やりが入る前に、見せしめ的に民主派のリーダーたちを監獄からしばらく出られないようにしてしまえ、という思惑が当局にあったのか否か。たしかなのは、そうした疑惑を暴くべき報道が香港ではすでに封じ込められているということだ。
COURRiER Japon