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絶滅危惧種ゴールデンライオンタマリンが30%減少、救済策はコロナで遅延

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ナショナル ジオグラフィック日本版

残り2500匹になった南米のサル、野心的なワクチン投与計画の行方

 ゴールデンライオンタマリンは、明るいオレンジ色をした小型のサルだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が急拡大しているブラジルで、半世紀以上行われてきたこのサルの保護活動が危機的な状況に陥っている。 ギャラリー:アマゾンの先住民とサル、強い絆を示すポートレート集 写真10点  ゴールデンライオンタマリンという名前の由来は、ライオンのようなたてがみにある。ブラジルでしか見つかっていないこのサルは、1970年代にはわずか200匹にまで減っていた。ペットとして売るために捕獲されたり、森林破壊によって生息地が失われたりしたためだ。しかし、飼育下での繁殖や生息地の移動といったその後のさまざまな努力のおかげで、2014年には約3700匹にまで回復していた。  ところが、別の障害が発生した。2017年に黄熱病が流行し、ゴールデンライオンタマリンの個体数は30%ほど減少した。対策として近年、タマリンに黄熱病ワクチンを投与する計画が進められてきたが、新型コロナの感染拡大により、中断を余儀なくされている。 「黄熱病でタマリンが死んだことには驚きました。もう一度流行が起きれば、とんでもないことになるでしょう」と、非営利団体「Global Wildlife Conservation」の保護担当者で、1970年代からゴールデンライオンタマリンについて研究しているラス・ミッターマイヤー氏は語る。黄熱病に感染するサルがいることは知られていたが、ゴールデンライオンタマリンもその一つだとは考えられていなかった。

不吉な予感

 ゴールデンライオンタマリンが減り始めたのは、2017年半ばのことだ。ブラジルでは80年ぶりに黄熱病が流行し、250人を超える人間と数千匹におよぶ様々な種類のサルが死んだ。  北リオデジャネイロ州立大学の霊長類学者で、ブラジルを拠点とする非営利の保護グループ「Golden Lion Tamarin Association」の代表も務めるカルロス・ラモン・ルイス=ミランダ氏のグループは、リオデジャネイロ州のポソ・ダス・アンタス生物保護区で行った定期的な調査で、ゴールデンライオンタマリンを1匹も見つけられなかった。1985年以降、主にこの保護区で調査を行っていたルイス=ミランダ氏は愕然とした。 「心配で、少し恐ろしくなりました。そこにはかなりの数がいたのです。突然、何か悪いことが起きたのだと気づきました」  まもなく、病気のゴールデンライオンタマリンが木に登ることができず地面に横たわっているという連絡が、地元の人々から入るようになった。  ルイス=ミランダ氏は、「草地で死んだゴールデンライオンタマリンが見つかるのは、とても珍しいことです。長いことゴールデンライオンタマリンの研究を続けてきましたが、初めて見る光景でした」と話す。タマリンは通常、森で暮らしており、草地を横切るのは森から森に移動するわずかなときだけだ。また、死体は食べられたり、多湿な環境のためにほとんど見つかることはない。  2018年5月、ゴールデンライオンタマリンが黄熱病で死んだことを科学者が初めて確認。2019年には事態の深刻さをさらに示す研究が発表された。黄熱病の流行により、ゴールデンライオンタマリンの個体数は2516匹と、2014年に比べて32%も減ったというのだ。ポソ・ダス・アンタス生物保護区では、のちに30匹のゴールデンライオンタマリンが生き残っていることが確認されたが、それでも個体数は70%も減少していた。  そこで、ルイス=ミランダ氏のグループは、米国を拠点とする慈善団体「Save the Golden Lion Tamarin」と共同で、ゴールデンライオンタマリンを救うためにワクチンの投与計画を立ち上げた。  霊長類の一種すべてにワクチンを投与するのは、まず不可能だろう。しかし、ゴールデンライオンタマリンの生息地は限られており、研究者による追跡も行われている。そのため、「National Institute of the Atlantic Forest」の霊長類学者兼ディレクターであるセルジオ・ルセナ氏は、実現できるはずと考えた。「成功させるには、限られた場所で厳密な方法でワクチンを投与しなければなりません」  第一段階として、飼育下のゴールデンライオンタマリンに人間用のワクチンを薄めて投与した。安全性に問題はないと思われたが、最大のハードルは森に暮らすゴールデンライオンタマリンにワクチンを投与する許可を得ることだった。政府もそのような要請を受けるのは初めてで、明確な承認プロセスはなかった。  ルイス=ミランダ氏のチームは最終的な承認手続きで許可がとれ次第、5匹の群れにワクチン投与を行う予定だった。COVID-19のパンデミックが起きたのは、そんなタイミングだった。

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