日本が「アジア投資銀行」参加に慎重であるべき理由
中国の海洋戦略に使われる?
さらに、仮にAIIBが発足した場合、融資の政策がどうなるかについても注意が必要です。中国がAIIB設立に熱心なのは、「海上のシルクロード」とも、あるいは「一帯一路」とも呼ばれる戦略、したがってまた、中国の海洋大国化戦略を達成したいからでしょう。AIIBの融資ポリシーはこの戦略的考慮によって影響される恐れがあります。 このことを断定するのは早すぎるとしても、「海上のシルクロード」や「一帯一路」構想は中国が公然と進めていることであり、各国は、少なくともそのようなこととの関連の有無を明確にすべきです。そのため、今起こっている流れがどのような方向に行くか、見極めてから参加の有無を判断すべきです。中国の海洋大国化戦略の影響をもろに受ける日本として、その確認をしないでAIIBに参加することは、日本の国益に反することになる恐れがあります。 以上のような考えから、AIIBの流れに乗ることに慎重な姿勢を堅持している日米両政府に賛意を表します。今後、日米両国は、できれば共同で、AIIBの創設準備の現状についての見解を公に表明し、建設的な方向に導いていくのが望ましいのではないかと思います。中国と対立する必要はありません。国際機関でなく中国の銀行であることを前提にした上で、協力の可能性を検討する姿勢を示すことが望まれます。 (美根慶樹/平和外交研究所)
■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹