日産が「3列シートミニバン」に斬新「“ツルツル”シフト」採用! もはや「シフトレバー」は“古い”!? なぜ「新シフト」が普及しているのか
「ATシフトレバー」の長い歴史にはさまざまな形態が存在した
日産の国内販売を支える主力モデルのひとつであるミドルクラスミニバン「セレナ」。2022年11月にフルモデルチェンジした現行の6代目モデルには、これまでとは大きく異なる斬新な形状の「ボタン式シフト」が採用され、大いに話題を集めました。 こうした新しいシフト、いわゆる「電制シフト」は、なぜ採用が広がっているのでしょうか。 【画像】「えっ…!」これが斬新すぎる「“ツルツル”シフト」です! 画像で見る(30枚以上)
今や、国内新車販売の99%がAT車です。 普段のクルマの運転で何気なく操作しているATシフトには、実は深い歴史があります。 そもそも世界初の大量量産車「フォード T型」は、2速セミATを採用していました。 また日本の量産車で初めてATが採用されたのは、トヨタや日産などではありません。 現在ではオフィス家具メーカーで知られる「オカムラ」が、旧社名「岡村製作所」時代だった1957年にデビューさせた「ミカサ」でした。 どちらも興味深い歴史の1ページといえるでしょう。 ATの「シフト」に着目しても、興味深い変遷があります。 1960年代から1970年代のクルマは、ATもMTもステアリングコラムの脇からシフトレバーが伸びる「コラムシフト」か、フロアからシフトレバーが伸びた「フロアシフト」のいずれかでした。 シフトフィーリングで考えると、コラムまでワイヤーを引き回すコラムシフトより、フロアシフトのほうが良好となります。 当時のクルマのカタログなどではわざわざ「フロアシフトを採用」と打ち出していたほどで、コラムシフトより上級の装備とされていました。 ただ、コラムシフトはフロアをすっきりとすることができ、前席の居住空間を広く取れるメリットがあります。 いっぽう内装のレイアウトデザインの視点でいえば、シフト周りを作り込めるフロアシフトのほうが、上質感を演出しやすいという特徴があります。 その後1980年代からのクルマは、フロアシフトが主流になります。 そして1990年代後半からセダンの人気が衰え、乗降性や車内の移動が容易なコンパクトハイトワゴンやミニバンの人気が高まると、シフトの位置はインパネへと移動していきます。 このころ普及し始めた、いわゆる「インパネシフト」は、コラムシフトの空間的メリットはそのままに、フロアシフトの良好なシフトフィーリングを両立させた構造となります。 さらに、ATのシフトポジションを移動させる操作性についても歴史の変遷があります。 ATの歴史の黎明期から1980年代までの長い間主流だったのは、ポジションが一直線になったストレート式でした。 この方式では、力の入れ具合にコツがいることが多く、ポジションを決めにくかったり、誤った場所にギアを入れてしまうという難点がありました。 その難点を回避するために、ブレーキを踏まないとRやDにシフトできない「シフトロック」が採用されましたが、操作感そのものを改善するものではありませんでした。 そこで登場してきたのは、シフトポジションがジグザクになっている「ゲート式」とよばれる新たなATシフトでした。 1980年代にメルセデス・ベンツが特許を取得し、世界初採用したものです。 やがて特許が切れると、ゲート式はJ字型、U字型などさまざまな形状となって、他メーカーも採用していきました。