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最新レーダーの話題(14)豪CEAの海軍向け艦載レーダー

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マイナビニュース

CEAFARとCEAMOUNT 実は、オーストラリアにはCEAテクノロジーズという会社がだいぶ前からあって、ここで同国海軍のANZAC級フリゲートに搭載する艦載レーダーを開発した。その実績を踏み台にして、ANZAC級の後継艦にも同社製のレーダーを載せることになっている。そのレーダーが、CEAFARとCEAMOUNT。 【写真】ハンター級フリゲートのイメージ(資料:Royal Australian Navy) CEAFARはSバンド(2~4GHz)の電波を使用する、フェーズド・アレイ型の対空捜索レーダー。普通、この手のレーダーは4面で全周をカバーしているが、CEAFARが変わっているのは6面構成になっていること。ひとつのアレイで60度の範囲をカバーすることになる。仰角についても60度までカバーできる。 もちろんアクティブ・フェーズド・アレイ型で、1面のサイズは、横幅1,340mm、高さ2,700mm、重量400kg。ひとつのアンテナは16個のタイルを組み合わせて構成しており、ひとつのタイルに64個の送受信モジュールを組み込んである。つまり、アンテナ1面には64×16=1,024個というキリの良い数の送受信モジュールがある。そして、送受信機とシグナル・プロセッサをアンテナ・アレイに一体化しており、そこに冷却水の流路を設けて発熱対策としている。 そのCEAFARとペアを組むのが、ミサイル誘導用イルミネーターのCEAMOUNT。ANZAC級は艦対空ミサイルとしてRIM-162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)を使用している。これはセミアクティブ・レーダー誘導型なので、イルミネーターで目標を照射する必要がある。 CEAMOUNTで使用する電波の周波数帯はXバンド(8~12.5GHz)。こちらもアクティブ・フェーズド・アレイ型で、256個の送受信モジュールを持つ20cm四方のタイルを4個組み合わせて、1つのアンテナ・アレイを構成する。つまり、こちらも送受信モジュールの数はキリ良く1,024個で、重量は225kg。アレイは縦長なので、2列×4段ではないかと思われる。 CEAFARは6面構成だが、CEAMOUNTは4面構成。そして、ひとつのアレイでカバーできる範囲は、左右方向が90度、上下方向が-30~+70度となっている。 改良型のCEAFAR2とハンター級フリゲート 続いて2014年から開発を始めたのが、CEAFARやCEAMOUNTの後継となるCEAFAR2。Lバンド版(CEAFAR-2L)、Sバンド版(CEAFAR-2S)、Xバンド版(CEAFAR-2X)の3種類を用意する計画になっている。前二者が対空捜索用、最後のXバンド版がミサイル誘導用であろう。 CEAFAR2では、送受信モジュールの素材をガリウム砒素(GaAs)から窒化ガリウム(GaN)に変更する。8段×8列=64個の送受信モジュールを束ねてひとつのタイルを構成して、それを複数並べて菱形のアンテナ・アレイを形成する。用途によって、組み合わせるタイルの数が変わる。 個艦防空用の「Self-defence face」ではタイルを4×4=16個(モジュール数1,024個)、艦隊防空用の「Air-defence face」ではタイルを8×8=64個(モジュール数4,096個)。艦隊防空用では探知距離を長くする必要があるため、モジュール数を増やしている。 ANZACフリゲートは、すでにCEAFARとCEAMOUNTを後付けする改造を済ませているが、さらにCEAFARに代えてLバンド版CEAFAR2の「Air-defence face」に換装するようだ。 ただ、ANZAC級フリゲートは建造してからかなりの時間が経過しており、老朽化が進んでいる。そこで後継艦の計画があり、英海軍の26型フリゲートをベースとする艦を建造することになった。そちらでも同様にCEAFAR2を搭載する。ただし、艦の「頭脳」にあたる指揮管制装置が違う。ANZACフリゲートではサーブの9LVを使っているが、ハンター級はロッキード・マーティンのイージス戦闘システムを使用する。 では、「ハンター級はイージス艦なのか?」というと、判断が難しいところ。もちろん、イージス艦で使用しているAN/SPY-1シリーズと比較すると、CEAFAR2のほうが世代が新しい分だけ、進化しているところもある。しかし、アレイはAN/SPY-1のほうが大きいし、アレイを構成する送受信モジュールやアンテナの数はAN/SPY-1のほうが多い。 そのことを考えると、いわゆるイージス艦と同等の能力をハンター級が発揮できるかどうかについては否定的にならざるを得ない。では、どうしてオーストラリアがこういう選択をしたのか。 思うに、指揮管制装置の分野でも高度化が進んでおり、特にソフトウェアの開発は手間がかかっている。そこで、レーダー探知の情報に基づいて脅威評価や意思決定を行う部分については、実績があって熟成されているイージス戦闘システムのものを使い、そこに自国製のレーダーを組み合わせることで産業基盤維持も両立させた、ということではないだろうか。 イージスとCEAFAR2の仲介役 もちろん、今のイージス戦闘システムはさまざまなレーダーに対応できるオープン・アーキテクチャ設計になっている。ロッキード・マーティンの担当者がそういっているのだから本当だ。 ただし、そのイージス戦闘システムを、オーストラリアが「自国製のレーダーを組み合わせたいから」といって、勝手にいじくるわけにはいかない。物理的に実現可能かどうかという問題ではなく、アメリカによる武器輸出規制・保全規定の対象になっているからだ。そこで、イージス戦闘システムはそのまま使い、それとCEAFAR2レーダーの間に「仲介役」を入れることになった。それをATI(Australian Tactical Interface)という。 実は、これはすでにホバート級駆逐艦でも用いられている手法。ホバート級はレッキとしたイージス艦だが、オーストラリアが独自に組み合わせたウェポン・システムとイージス戦闘システムの間を取り持つために、ノルウェーのコングスベルクが開発したATIを導入した。ただし、ハンター級のATIはコングスベルクではなく、サーブが手掛けることになっている。 著者プロフィール 井上孝司 鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。 マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

井上孝司

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