闇バイト対策の最前線 サイバーパトロールを初取材 SNSでの募集の文言に変化も
All Nippon NewsNetwork(ANN)
今週も関東各地で強盗事件が相次いでいますが、この年末年始、引き続き心配されるのが「闇バイト」による強盗事件です。どうしたら事件を防げるのか…。対策の最前線に、初めてカメラが入りました。(12月28日OAサタデーステーション) ■年末にかけ関東で強盗事件が相次ぐ 報告・鈴木闘匠ディレクター(28日 群馬・太田市) 「いま、警察官が被害者宅に入っていきました。中で事件の事情聴取をしているのでしょうか」 年末に再び関東で強盗事件が相次いでいます。27日早朝、群馬県太田市の住宅に男2人が押し入りました。男のうち1人が「キャッシュカードを出せ」と脅してきましたが、住人の男性が拒んだため、何も盗らずに逃走したということです。近隣住民は、不審な声を耳にしていました。 近隣住民 「うわーというような叫んでいる声を聞いて、そしたら『誰か助けてくれ』って声が聞こえて。影が窓から見えて、窓越しに見えたのは何かもめているなって」 22日には、千葉県内でも強盗事件が相次いで発生。午前2時半ごろ、柏市に住む男性は侵入してきた男に顔を数回殴られたうえ、首を絞められました。警察は少なくとも2人で犯行に及んだとみています。 番組が入手した現場付近の防犯カメラ映像には、警察への通報からおよそ15分後の午前2時50分ごろ、現場方面に向かうパトカーが映っていました。 報告・渡辺裕也ディレクター(27日 千葉・柏市) 「柏市による巡回パトロールが行われています」 事件を受けて、市の職員が車で現場付近をパトロールしていました。 柏市の強盗事件から3時間後の午前5時半ごろ、およそ60キロ離れた旭市でも強盗事件が発生。3つの事件は、いずれも容疑者は逃走中で、警察は、闇バイトによる一連の強盗事件との関連があるのか調べています。 ■闇バイト募集の文言に変化 今年、日本中を震撼させた闇バイトによる連続強盗事件。今回、サタデーステーションが訪れたのは闇バイト捜査の最前線、警視庁。 闇バイト対策を指揮する現役の幹部に話を聞くことができました。いま、警視庁が力を入れているのは、闇バイトを募集するSNS投稿に警告を送るサイバーパトロールです。 サイバーパトロールを行う場所は、警視庁内にある特殊な部屋。詳しい場所を明かさないという条件で今回、初めて取材カメラが入ることができました。犯行グループは、どのようなキーワードを使って闇バイトを募集しているのでしょうか? 警視庁生活安全総務課 二宮健課長 「以前は闇バイトですとか、叩き(強盗を示す隠語)ですとか、犯罪を想起させる直接的な文言があったが、ホワイト案件ですとか若干ソフトな表現に変遷を重ねています。私どものリプライ警告を受けるのを避けるために、そういった文言を少しずつ変えていると考えております」 これは捜査員が見つけた闇バイトとみられる投稿です。「運び案件募集します」「ご報酬は5万から15万円」「エリアは全国可能」「テレグラム必須」。こうした怪しい投稿に対し、警視庁の公式アカウントから文章や画像で注意喚起を促す「リプライ警告」をします。 (警視庁の捜査員が送るリプライ警告) 「このポストは詐欺等の実行役を募集する不適切な書き込みの恐れがあります」 しかし、中には警視庁のアカウントがブロックされ、リプライ警告が出来ないケースも…その場合は? 警視庁生活安全総務課 二宮健課長 「事業者に対して、そのポストを削除するように依頼することも対策となっております」 このリプライ警告には、2つの効果があるといいます。 警視庁生活安全総務課 二宮健課長 「リプライ警告をした投稿に関しましては、その大半が自主的に削除されているという状況を確認しております。投稿を閲覧した方に対しても必ず逮捕されるといったことを伝えることによって、(闇バイトに)応募することを思い留ませるということをしております」 一方、警察庁では、AIを活用したリプライ警告をこれまでに約2700件(今年4月~9月)実施しています。 警視庁生活安全総務課 二宮健課長 「(闇バイトに応募して)犯罪に加担してしまったかもしれないという状況があったとしても、警察はその方とそのご家族の安全を守りますので、勇気を振り絞って警察に相談していただきたいと考えております」 ■新たな捜査手法も導入へ 高島彩キャスター 「闇バイトによる事件が後を絶たないということで、警察庁は新たな捜査手法を取り入れる検討を始めました」 板倉朋希アナウンサー 「はい、それが『仮装身分捜査』という手法です。闇バイトの場合、応募の段階で身分証明書の提示を求められるので、捜査員が架空の身分証明書を作るというのがポイントになっています。例えば、架空の運転免許証などを使って闇バイトに応募して犯行グループに接触することで、事件発生の抑止、あるいは検挙を狙うというものです」 高島彩キャスター 「よく耳にする『おとり捜査』がありますが、それとは何が違うんでしょうか」 板倉朋希アナウンサー 「『おとり捜査』は身分を隠して捜査するというもので、今回の『仮装身分捜査』については、身分を隠しつつ架空の身分証を作って捜査するという点ですね。この手法について刑事法が専門の東京都立大学・星周一郎教授は、『事件の根絶は難しいにしても、捜査員が紛れ込んでいるかもしれないとなると、闇バイトで実行役を募集する側と、そして参加する側に対しても一定の抑止効果はある』とおっしゃっています」 高島彩キャスター 「こういった捜査手法を検討し始めたということですけれども、柳澤さんは、『仮装身分捜査』の導入についてはどう思いますか」 ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「やっと捜査が一歩踏み込むことになったと思う。効果も期待したいなと思います。ただ一方で闇バイト以外にこの捜査手法がむやみに拡大されてしまうと新たな問題も起こしかねないということなので、運用の面については慎重さが求められると思いますね」 高島彩キャスター 「ネット上では新たな犯罪がどんどん増えているというのが現状ですから、それに対応した捜査手法を考えることも必要かもしれません。政府は来年の早い時期に導入する意向を示しています」
テレビ朝日