ルーマニア大統領選、再集計へ TikTokが極右候補に「優遇措置」との疑惑で
ニック・ソープ中欧特派員 ルーマニアの憲法裁判所は28日、24日に行われた大統領選挙の第1回投票について、票の再集計を命じた。動画共有アプリ「TikTok」が、この投票で予想外の首位となったカリン・ジョルジェスク氏に「優遇措置」を与えたとの疑惑を受けた判断。 無所属の急進派であるジョルジェスク氏は、主にTikTokで選挙活動を行った。 TikTokは、極右で親ロシア派の同氏を優遇したとの疑惑を、断固として否定している。 ジョルジェスク氏は大統領選で23%の票を獲得。次点は野党「ルーマニア救国同盟(USR)」のエレナ・ラスコニ氏(得票率19%)だった。与党・社会民主党のイオン=マルチェル・チョラク首相は3位だった。 ルーマニアの中央選挙管理委員会は、再集計をどのように実施するか、どの人員を使うか、そしていつまでに行うかを決定しなければならない。 共産主義崩壊後のルーマニアで、投票の完全な再集計は前例がない。 現状では、ジョルジェスク氏は12月8日に行われる決選投票でラスコニ氏と対決する予定だ。 ラスコニ氏は、「過激主義には裏工作ではなく、投票で戦うべきだ」と述べた。 「私は中央選管に対し、賢明に票の再集計を行うよう求める。法律はすべての人に対して平等でなければならず、一部の人に対して異なる解釈をされるべきではない」 ■TikTokは強く否定 TikTokは、ルーマニアの最高安全保障機関である国家防衛最高評議会から、選挙規則を尊重しなかったとの非難も受けている。 現職のクラウス・ヨハニス大統領は、評議会を招集した際、TikTokがジョルジェスク氏を「政治候補者として表示しなかった」と述べた。 しかし、TikTokはこうした指摘を強く否定している。 同社は声明で、「ジョルジェスク氏のアカウントが他の候補者と異なる扱いを受けたという主張は、断固として誤りだ」と主張。 「ルーマニア当局から、識別子が欠けているいくつかの動画について連絡を受けた際には(中略)24時間以内に対応した」と述べている。 ジョルジェスク氏自身も、選挙で有利になるようソーシャルメディアを違法に使用したという批判に反論している。 ジョルジェスク氏のアカウントは、2週間前まで3万人だったフォロワーが現在は33万人を超え、4百万件以上の「いいね」を獲得している。 ジョルジェスク氏はBBCに対し、「この選挙活動の予算はゼロだった。私のチームは非常に小さく、最大でも10人で、それ以上はいなかった。しかし、私たちの背後には何百万人もの人々がいた」と語った。 「私は特別ではない。ルーマニアの人々が特別なのだ。ルーマニアの人々は自由を必要としている。真の民主主義とは精神性を意味する。神、我々の土地、我々の財産、我々の魂、我々の家族を意味する」 そのうえでジョルジェスク氏は、政府機関が国民の選択を否定しようとしていると述べた。 ■歓喜、絶望、困惑 反ジョルジェスク派の人々はすでに、首都ブカレストや複数の地方都市で抗議を行っている。一方、ジョルジェスク氏は支持者に対し、「友人や家族と一緒に家にいて、挑発に応じないように」と呼びかけている。 ルーマニアの通信規制当局Ancomは、選挙プロセスが操作された疑いについて検察の調査が行われるまで、TikTokのサービスが一時停止されるよう求めている。 また、同国の全国視聴覚評議会は、正式な政治広告を禁止しているTikTokが選挙でどのように使用されたかについて、欧州連合(EU)の欧州委員会に調査を依頼した。 ルーマニアは12月1日に議会選挙を予定している。極右のルーマニア統一同盟(AUR)とSOSルーマニアは、大統領選の結果を受けた支持率の急上昇を期待している。 一方、連立与党の社会民主党と国民自由党は、大統領選での候補者の敗北により混乱状態にある。 ルーマニア国内、そして国外に散らばる大規模なルーマニア人コミュニティーでは、一連の動きに対する歓喜や絶望、あるいは単なる困惑といった、さまざまな感情が見られる。 なお、これとは別に憲法裁は、ジョルジェスク氏の選挙資金に違法性があるとした、対立候補2人による訴えを棄却した。 (英語記事 Romania orders election recount after TikTok bias claims)
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